世界に冠たる“国民皆保険制度”。
社会保障制度を論じる際の枕詞(まくらことば)になっている。
だが、その実態についてどの程度、国民の常識に入っているか。
国民が加入する保険先が
「健康保険組合」「協会けんぽ」「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」
と別れていて、職業が変われば、また長生きすれば、
加入先や窓口が変わり、保険料額は上下変動する。
なんでこんなに複雑なのか?
2022年は健康保険法制定100周年だ。
50周年では記念切手が発行されている。
100周年では、切手にとどまらず、
真の国民皆保険への脱皮を期待したい。
人生50年時代では「大病したときのセーフティネット」でよかったが、
人生100年時代では生活習慣病に備えた健康づくりの
推進役機能が求められるはずだ。
一度だけの人生が楽しいか、
苦痛にさいなまれるかにおいて、心身の健康度の比重は軽くないだろう。
関係者の合意があればすぐにでもできる方策を挙げてみよう。
社会保険は国民連帯精神の具体化なのだから、
保険料負担は職業、年齢を問わず公平にするべきだ。
つまり加入保険制度に関わらず、保険料率を一律にする。
そのうえで加入者の健康づくりに成果を出している保険集団に、保険料を大胆に還付する。
保険者はその資金を使って健康づくりを増進し、医療費をいっそう節減させる。
保険集団間に加入者の健康づくりアイデア競争が起きれば、
数年を経ずして、高齢者の有病率や重度が下がり始める。
総医療費に占める高齢者の比率が下がれば、
医療保険の全体財政は健全化し、一律設定の保険料を下げていくことが可能になるのだ。
やる気がない保険者に財政調整と称して援助するのではなく、
保険者に対して加入者の健康向上に精出すインセンティブを与える。
方法を変えるだけで実現できる。
終活カウンセラー協会顧問 喜多村 悦治