怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記266   NATO条約5条

作成者: 終活カウンセラー協会顧問 喜多村 悦史|Apr 30, 2021 2:16:00 AM

NATO。北大西洋条約機構。ソ連、ロシアのヨーロッパ侵略を防止するための軍事同盟である。プーチンによるクリミア半島や東部地域への侵攻をウクライナが防止できなかったのは、同国がNATOに加盟できていなかったため。バルトの小国(リトアニア、ラトビア、エストニア)などがロシアの魔の手に落ちないのはひとえにこの軍事同盟のおかげである。


その根拠が条約の5条。「欧州又は北米における一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなす。締約国は,武力攻撃が行われたときは,国連憲章の認める個別的又は集団的自衛権を行使して,北大西洋地域の安全を回復し及び維 持するために必要と認める行動(兵力の使用を含む。)を個別的に及び共同して 直ちにとることにより,攻撃を受けた締約国を援助する。」


NATO加盟は30国。その総軍事力は兵員約326万人、軍事費 約1兆360億米ドル(2019年)にのぼる。さすがにプーチンも手を出せないだろうというわけだ。
先日再放送のテレビドラマ『MADAM SECRETARY』で恐ろしいシナリオが展開されていた。
人民の不満解消のために対外侵略戦争を始めるのは、レーニン、スターリン以来の共産党独裁政治の常套手段。不満分子を兵士として動員して戦場で死なせれば(“裁兵”という専門用語がある)一石二鳥。成功して領土、資源、勤勉な人民を得られれば言うことなし。


ドラマではロシア大統領(物語であり架空の人物がウクライナの先、クリミアから黒海対岸のブルガリアに侵略を開始するのだ。「ブルガリア市民正規軍」なる組織が突如現れ、腐敗し民主主義政権を打倒する正義の闘いとのプロパガンダで裏打ちしている。純朴な日本人は「そういう不満が国内にあったのね」と物分かり良く振舞いそうだが、市民正規軍の無線を傍受した諜報機関によれば「通信内容はロシア語だった」。しかしロシア政府はアメリカのでっち上げと一蹴する。


ブルガリアのほか、次は自国にロシア軍が来ると予測されるバルト三国やポーランドはNATO条約5条の発動を火のつく勢いで要請し、ブリュッセルのNATO本部で全体会議が開かれる。しかしただ一国、フランスが市民軍の実態を調査し結果が出るまでは軍事行動に出るべきではないと強硬に反対する。5条発動には加盟国全部の賛成が条件になっているのだ。肝心な時にそれが足かせになってしまった格好である。会議が暗転する間にも、日一刻と事態は悪化している。
ロシア軍の偽装である市民正規軍は政権を掌握したとして、ロシア軍の国内進駐を要請し、批判派のブルガリア国民を逮捕投獄していく。殺害もされているのだろう。


ロシアの強硬姿勢とフランスのNATO精神を損な行動の裏に何かある。一人の学者の頭に閃いた仮説を諜報機関が追って得た情報は驚愕ものだった。フランス大統領は選挙資金をロシア政府から得ていたのだ。その際の密約で「NATOの無力化にあらゆる手を使う」ことを約束していた。ロシア政府に買収されたフランス大統領だったわけだ。


しかしそのような民主主義の根幹を揺るがすスキャンダルを表に出せない。ロシアや中国に「民主主義はこの王に機能しない」と新たなプロパガンダの材料を与えてしまう。そこでNATO主要国間で秘密外交交渉が交わされ、次の会合でフランスは棄権に回る。これによって残り29国の全員一致でNATO軍がブルガリア開放に派遣される。
こうなると士気の違いでロシア軍は鎧袖一擲で粉砕され、大量の捕虜を残して撤退する。政権を取ったはずの市民軍メンバーはそっくりどこかに消えてしまう。軍服を脱ぎ換えてロシアに逃げ帰ったのだろう。


ここで「捕虜は全員戦争犯罪者として強制労働」と行きたいところだが、NATO側は「監獄や強制収容所に押し込まれていたブルガリアの善良な市民の開放」という寛大な交換条件で、ロシアへの帰還を許すのだ。これが民主主義国のルールというわけだが、ロシア大統領は失敗の代償が存外少なくて済んだことに味をしめ、二度目、三度目の侵攻プランを考えるだろうという余韻を残してドラマは終わる。
眼をアジアに転ずればどうか。日本の政治家の中にも買収されている者がいるかもしれない。ところが調査しようにも、まともな諜報機関すら持っていない。逆に機密情報は外国政府にダダ洩れ状態。日露戦争の前、「ロシア軍が攻めてくれば自分も銃を担いで闘う」と伊藤博文元総理は悲壮の思いを吐露している。そういう覚悟の政治家、国民は今の日本に何人いるだろう。


おりしも菅総理とバイデン大統領による日米競争生命が出され、尖閣主権防衛が明記された。民主主義国日本人と日本政府の覚悟を示さなければならない。中国政府・共産党に買収されている政治家はないないだろうね。また目先の商売に目を奪われて、民主主義の破壊を目指す中国政府・共産党に無意識に手を貸している日本人ビジネスマンはいないだろうね。

顧問 喜多村悦史