怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記㉜ M・ウェーバー没後百年に思う

マックス・ウェーバーというドイツ人の名前を聞いたことがあるが、何をした人? ボクも数年前まではその一人だった。『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読むまでは。近世ヨーロッパ発展の原動力を宗教革命で生まれた新教、特にカルヴァン派が説く勤勉、禁欲、生活合理化に求める。なるほどと深く合点した。

彼には『職業としての政治』という講演録があり、今でも政治を志す人の“必読書”になっていると日本財団理事長の笹川陽平さんが書いている(産経「正論」93日)。

日本でも政治家の指標になるべき先人は幾人もいると思うが、ここでは笹川さんの文章をヒントに、ウェーバーの視線で日本の政治を見てみよう。

 政治家という職業の厳しさは、自分の行為の責任を自分一人で負うところにあり、この責任を拒否したり転嫁したりすることはできないし許されない。

 講演時のドイツは第一次大戦の敗戦直後。しかも世界はスペイン風邪のただ中だった。現在のコロナ世界流行はこれに相似するが、日本にウェーバーが説く情熱、責任感、判断力を備えた政治家は少ない。選挙制度が「政治のために生きる」政治家より、政治を収入源とし「政治によって生きる」政治屋が増える結果を増やしている。

3786805_s

参院選での大規模買収疑惑とカジノ統合型リゾートでの収賄疑惑。その渦中の国会議員3名は、政治的倫理感に基づき、自ら身を引き、高額な歳費を返上するのが筋だ。刑事裁判での「推定無罪」と、政治家という職業の線引きが必要だ。

米中対立の中での安全保障・外交問題、危険水域の国の財政、いつ起きてもおかしくない巨大地震、常態化する豪雨災害。ウェーバーは政治家にとって大切なのは将来に対する責任と説いたが、日本の政治家の覚悟と気概はどうであろうか。

 

喜多村悦史

2020年09月04日