怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記56 お彼岸の中日

 お彼岸は家族総出でお墓参りをするのが国民的行事。墓所で遠縁の家族とばったり出会い、血縁の広がりを実感する。この出逢いはお墓に祀られているご先祖が導いてくれたものだ。つまりそのご先祖様に末広がりの遺族がいて、かつお墓が建立されていた。お墓参りは必ずしも人類普遍の風習ではない。実現性は低いと思うが、某国のように、先祖崇拝は迷信であり非科学的、なおかつ土地の無駄は使用法であるから禁止するといったことになれば、お墓参りはできなくなる。

わが国では長らく、埋葬して土に戻す、すなわち土葬が主流であった。この方式ではお墓参りは分かりやすい。ご先祖の埋葬地はここであると明瞭だから、その場所が墓参場所になる。よってそこに墓標を建てる。長持ちさせるには石材が妥当とされる。

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火葬ではどうするか。土に戻す意味で、土中に焼骨を納める形態になった。墓石の真下の土中に遺体を埋葬した形式を取るのである。穴を掘っておき、焼骨を納める方式、あるいは骨壺に入ったままの形で墓石下部の空間に安置する方式である。その墓石はどこに建立してもよいのかの問題が残った。土葬ではさすがに庭先を選ぶ者はいないが、焼骨であればかまわない考えもあったからである。そこで墓地埋葬法が制定され、墓石の建立場所は行政庁が許可する墓地杭域に限定することで解決した。

国際化の今日、風葬、鳥葬あるいは川(インダス川が著名)に流す風習の人がその流儀で弔うことが認められるか。現行墓埋(ぼまい)法には土葬、火葬しか規定がない。だが無規制、自由だとの主張はあり得ないだろう。許可制になっていない葬法は禁止、解禁には法改正が必要とするのが合理的解釈。焼骨をさらに粉状に砕き、これを風に吹かせるいわゆる撒骨も基本的なところは同様であろう。

顧問 喜多村悦史

 

 

2020年09月23日