冒頭で預貯金の質問をさせて頂きました。
預貯金において重要なことはまず、どこの銀行にお金を預けているのかを明確にすることです。
最低限、支店名までわかっていれば残された方が困らないといわれていますが、一番怖いのはあとから誰も認知していなかった口座が見つかることです。
いわゆる争続(あらそうぞく)の火種になる可能性がありますし、
揉めに揉めてやっと終わった遺産分割協議の後に新しい口座が見つかり、すべてやり直しという事例もございます。
「うちはお金がないから大丈夫」「仲がいいから平気だよ」という方が多いですが、
相続トラブルの約75%が5000万円以下の相続です。(1000万以下は全体の32%)
相続金額の決定は法律よりも先に、まず被相続人(本人)の意思が優先されます。
大切な家族を守るためにも、エンディングノートに向き合う事をきっかけにご自身の財産を再確認し、
承継者へしっかりと自分の意志と思いを伝えておきましょう。
先の項目で相続トラブルの75%は5000万円以下の相続と挙げました。
そんな持ってないよ!とお思いの方が多いと思いますが、
この不動産(持ち家や土地)を含めたらこの金額に現実味が出てきませんか?
家や土地を分ける事は難しいですよね。不動産は相続においても問題になりやすい項目であるのです。
PICKUP 不動産分割方法
不動産を売却して現金化してから分ける「換価分割」や、
誰か1人が不動産を相続し、他の相続人に代償金を支払う「代償分割」という方法もございます。
換価分割の問題は、すぐ買い手が見つかるとは限らないこと。
その結果、「少しでも高く売りたい」「相続税の支払いで現金が必要。すぐ売りたい」と揉めることもあります。
代償分割では、家を受け継いだ相続人が他の相続人に対して代償として金銭を支払うことになります。
ただ、相続人が代償となる現金を用意できなかったり、その額で争いに発展することもあります。
細かいことを話し始めるとキリがないのですが、専門家でないと分からないことばかりです。
エンディングノートにおいてはまず、どこにどれだけの不動産があるのかを明確にしつつ、
評価額や登記簿謄本の所在など、必要な書類を把握し、遺される家族の負担を軽減することを考えてみましょう。
高齢者になったら年金はもう貰っているしなんで書くの?という方も多いと思います。
年金は安心な生活を送る上で基盤となる非常に重要な制度です。年金を受給するためには自ら申告をしなければなりません。
同時に、受給している方が亡くなった場合は、
基礎年金番号と年金コード、生年月日を記入し、
亡くなった方の年金証書と死亡を明らかにできる書類(戸籍謄本や住民票の除票など)と共に申告して申し出なくてはなりません。
基礎年金番号を住所や電話番号のように覚えている方はほぼいないと思います。
この項目に取り組む際には、ご自身の年金証書がどこにあるのか、個人年金や年金保険などの加入有り無しを明らかにしておきましょう。
またここまで、預貯金や不動産に触れてきましたが、まだまだ財産として挙げられる項目が残っております。
ゴルフの会員権や純金積み立て、仮想通貨など…
改めて思い返して書き出しておきましょう。
PICKUP 年会費や自動引き落とし更新など
ここも重要なポイントです。
ジムや習い事、携帯電話の料金など自動引き落としで会費がかかる事や、
FXのように価値が日々急変動するものは後々取り返しのつかないことになる可能性があります。
もちろん金銭的な価値の有り無は関係ありません。
第三者から見たらただの遺品でも、初めての結婚記念日にもらった指輪や、
子供や孫からもらった肩たたき券など、個人的に思い入れのある品を記入するのもOKです。
もしもの時に備えて加入する保険。ここでは主に生命保険と損害保険について記入をします。
いざ保険金を受けとる条件を満たしたとて、自己申告をしない限り、保険金受取人のもとにお金は入ってきません。
要は受取人がしっかりと保険の認知をしていなければ、ただお金を払っていただけで、本来の目的を果たせないのです。
また、認知していても受け取れなかった再婚したご夫婦の事例もございます。
いざ現在の妻が生命保険の受け取りを申し出た際に、夫が加入していた生命保険の受取人が前妻になったままでした。
これでは1円たりとも妻にお金が入ってきません。
保険会社にお勤めの方はよくご存じかと思いますが、受取人変更手続きは紙1枚の記入で終わるような手続きさえ踏めば完了します。
必ずご自身の契約条件、受取人の確認は今一度しておきましょう。
次に遺言についてもお話します。
法的な効力を持たず、自由に自分の意思を書けるエンディングノートですが、法的な効力を持った「遺言書」を用いて意向を示す方法があります。
遺言書には自分で作成する自筆証書遺言と法務実務士が作成する公正証書遺言がありますが、
どちらも遺族や相続人が存在を知らなければ、結果的にただの紙切れとなってしまう場合があります。
遺言書を作成した場合は、必ず存在や所在を承継者に伝え、適切な管理をしておきましょう。