相続診断士が伝える“笑顔相続のススメ”

「第3回 余命6ヶ月のお客様にエンディングノートを紹介」

今回は、相続診断士の方からお伺いしたお話を紹介します。

 


 
 Aさんは、生命保険の営業を始めた13年前、2番目に契約をいただいたお客様でした。契約後も、公私ともにお世話になっていました。 
契約から10年ほどした頃、Aさんから「がんで手術をすることになった」と連絡を受けました。そのときは大変ショックを受けましたが、手術がうまくいき、しばらくして元気に職場復帰された様子を聞き、心の底からご快復を祝いました。手術給付金と入院給付金が入金されると、とても感謝していただきました。
 
 手術から1年後、がんが再発したとの連絡を受けました。再手術は成功し、ほどなく職場復帰されましたが、13年前に初めて出会った頃の格幅のよい面影は完全に消え、別人のように痩せていらっしゃいました。
 
 私は、誠心誠意、入院のサポートをさせていただきましたが、その後Aさんは、入退院の繰り返しとなりました。
 
2回目の手術から1年後のある日、病院にお見舞いに伺ったときのことです。いつも笑顔のAさんが急に真面目な顔になって言いました。
 
 「いろいろお世話になったね。実は自分はもう先が長くないようだ」
 
 「何を弱気なことを」と元気づけようとしましたが、Aさんの思いつめた厳しい顔を見ると、何も言葉を発することができませんでした。
 
 Aさんが話を続けました。「いろいろと整理を始めたんだよ」。「整理ですか?」と返事をすると、Aさんは傍らのノートを私に見せ「これが何だかわかる?」と尋ねてきました。
 
 ノートには、2つのグループがあり、名前が書かれてありました。直感的に、何かあった時に知らせてほしい人かな? と思いました。
 
 Aさんは、「こっちは葬式に呼んでほしい人、こっちは葬式に来てほしくない人」と明るく笑って話してくれましたが、私は顔が引きつってしまい、一緒に笑うことができませんでした。ノートには、財産の明細なども書かれてありましたが、まだ、書き始めたばかりの印象でした。
 
Aさんの病室を出て、エレベーターに向かう途中、奥さまから「主治医からあと6ヵ月と告げられました。主人もわかっているようで、最近、いろいろ考えているみたいです」と教えていただきました。
 
「何かしてあげられることはないか?」。思いついたのが、エンディングノートでした。しかし、余命6ヶ月の宣告を受けた方にエンディングノートを渡すのは、とても勇気がいります。「傷付けてしまうのではないか?」「怒られるのではないか?」、いろいろ悩みましたが、きっとわかってもらえるはずと意を決しました。
 
「Aさん、エンディングノートってご存知ですか? いろいろ考えていらっしゃると聞き、大変失礼かもしれませんが・・・」
 
Aさんは、エンディングノートを手にすると、1ページずつ丁寧にめくっていきました。最後のページまで見終えると、「こんなに良いものがあるんだね。今の私に一番必要なものだよ。本当にありがとう。すごく良いものだから、自信を持って皆さんに勧めてください」と私の手をギュッと握りしめてくださいました。
 
それから3か月ほどして、Aさんは天国に旅立たれました。
 
葬儀のあと、奥さまから「主人が○○さんに本当に感謝していました」との言葉をいただき、勇気を出して、エンディングノートを手渡して良かったと涙しました。
 
【ご案内】
■相続診断士とは
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■第9回笑顔相続シンポジウム 講演動画
https://youtu.be/blwtk-dokxg
2022/12/1に開催したシンポジウムをURLからご覧頂けます

2023年03月15日