相続診断士が伝える“笑顔相続のススメ”

第5回 “争族”を避けるための生命保険加入

(76)は、長男(48)とその家族、妻と中学生と小学生の子どもと東京の世田谷区で一緒に暮らしていました。もうひとりの息子の二男(46)は、最近、横浜に新居を取得し、妻と小学生の子ども2人と暮らしています。

 

 母の財産は、長男家族と同居している世田谷区の自宅5000万円と1000万円の現金です。相続財産は合計で6000万円ですので、相続税はかかりません。

 

 一般的に1億円以下の資産をお持ちの方は、相続に対して特に何も準備をすることなく、お亡くなりになります。

 

 何も準備せずにお亡くなりになると、今回のケースでは次のいずれかの遺産分割になることが多いです。

①兄が5000万円の不動産を取得、弟が1000万円の現預金を取得

②不動産を2分の1の共有とし、現預金を500万円ずつ取得

 

もし、皆さんがこの兄弟でしたら、どちらの遺産分割を行いますか?

 

 ①のケースは、母と同居していた兄が「長年、母親の面倒を見てきたのは自分だし、中学生と小学生の子どももいるし、不動産は自分がもらってもいいよな…」と弟に迫り、弟が法定相続分は2分の1あるのにと思いながら、渋々、印鑑を押しているケースです。

 

 ②のケースは、同様に弟に迫る兄に対し、弟が法定相続分を強く主張し、場合によっては弁護士までも登場し“争族”になってしまっているかもしれないケースです。

 

 弟が会社を経営していて資金繰りが苦しかったり、新居を借金で購入したばかりの場合に、よくこのケースになります。

 

居住用不動産を共有にした場合の問題は、兄弟2人が生きているうちはまだよいのですが、弟が亡くなってから、弟の妻や子供が兄一家の大家として登場することです。

そして、弟の妻や子供は、義兄一家の不動産を持っていても意味がありませんので、兄に対して買取請求が行われます。

 

弟の持分である2分の1の不動産を買い取る資金を兄が持っていればよいのですが、買取ができないと「では家賃を支払ってください」ということになり、兄が弟の妻や子供に家賃を支払うことになります。元々、自分が生まれ育った家なのに、何か居心地が悪くなってしまいます。

 

この母は、自分の死後も兄弟仲良くやってほしいと願い、生前、相続診断士に相談し、エンディングノートを記入していました。

「長男へ 自宅の不動産は、先祖代々の不動産なので、近所付合いやお墓の面倒を含め、長男に引き取って、死ぬまで守ってほしい。そして、私が死ぬと500万円の保険が長男におります。そのお金は不動産をもらう代わりに弟に渡してください」

「二男へ 預金が1000万円しかないけれども、このお金は死んだお父さんと私がコツコツ貯めたお金です。大切に使ってください」

「2人へ 兄弟いつまでも仲良く力を合わせて、生きていってください」

 

こうしたことをエンディングノートに書いた結果、母の遺志のとおり兄5000万円、弟1500万円の遺産分割となりました。

 

 5000万円以下の財産でも、もめる家族はもめています。

 

 エンディングノートを利用し、どのように財産を受け取ってほしいか、そしてその理由をしっかり伝えるようにしましょう。

 

 その際、生命保険を上手に利用し、遺留分に配慮しましょう。

 

【ご案内】

■相続診断士とは

https://souzokushindan.com/inheritance_consultant.html

相続の基本的な知識を身につけて相続診断ができる資格

 

■第9回笑顔相続シンポジウム 講演動画

https://youtu.be/blwtk-dokxg

2022/12/1に開催したシンポジウムをURLからご覧頂けます

 

 

相続診断協会 代表理事 小川実

2023年05月16日