怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記⑭ コロナ封じの「恥」の価値観

新聞記事の紹介。産経新聞の「東京特派員」(811日)というコラム。

著者は元論説委員の湯浅博さん。左右の全体主義に迎合せず、自由主義を貫き通した河合栄次郎の伝記である『全体主義と闘った男』(潮書房光人新社)の著者として知られている。 

 コラムの主題は、台湾がコロナ封じ込めに成功した秘訣の解説である。ご案内のように台湾はWHO(国際保健機関)から締め出されている。中国政府が仕掛ける債務の罠に落ち込んでいる開発途上国は数が多い。中国の指示するままに投票するから、一国一票の国際機関では中国が圧倒的に強い。

 武漢ウイルスは中国の初動での情報隠しが世界蔓延につながった。だがWHOは「習近平体制は、感染拡大によく努力している」と手放しの称賛をしていた。中国への併合を受け入れない台湾は存在しないものとして扱うのが妥当ということになるらしい。

 命題の「恥」の価値観について湯浅さんの指摘である。2003年には上海起源のSRAS(重症急性呼吸器症候群)騒動があった。忘れっぽい日本人の大半は覚えていないだろう。ボクもコラムを読むまで、同僚だった検疫所長がウイルス流入を防ぐため命がけで船に乗り移って船舶検疫をしたことを忘れていた。(今度会ったら謝ろう。)

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 日本が何とか水際で踏ん張っているさなか、日本旅行中の台湾研修医のSARAS感染が明るみになり、国内各地がパニックになった。知己の日本在住台湾人は「恥ずかしい」と言い、「恥辱と羞恥と面目に厳格だった時代の日本を見る思いがした」という。

 今回のコロナ抑え込みは、SARSを流入への反省から、台湾で国防訓練、災害訓練並みの感染症防護体制が構築された成果。その出発点に日本人が忘れようとしている「恥ずかしい」「情けない」という心情があったのだという。日本では死語かなあ。

2020年08月18日