
怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~
難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者を
安楽死させた容疑(嘱託殺人)で医師2人が逮捕された。
京都府在住の女性患者の依頼を受け、昨年11月友人を装って同宅を訪問、
介護ヘルパーが別室に下がっている間に薬物投与したという。
この病気では全身の筋肉が徐々に動かなくなる。
会話、咀嚼そして呼吸機能までもが奪われていくが、
視力、聴力などは維持されたままであるらしい。
筋力が衰えた当人は自殺実行できず、報酬を支払い、薬物投与を委嘱した。
亡くなった女性は安楽死を強く願っており、
それを認めない現在の社会システムに異を唱えていた。
主導者とされる医師の妻は元衆議院議員で、生命倫理に強い関心を示していた。
医師本人も厚労省の医系技官経験があったようだ。
当人の意思に反して命を奪えば殺人罪だが、
当人の意向に沿った場合も罪に問われる(嘱託殺人罪=刑法202条)。
この条項の当否をどうとらえるか。
意思能力が十分ではない人の本心ではない同意をもとに
安楽死が横行する社会にしてはならない。
一方、医療効果がなく苦痛にのたうつ患者の死ぬ権利を無視していいのだろうか。
外国では安楽死を合法化しているオランダやベルギーのような国も少なくない。
アメリカでは州によって考えが異なる。
わが国にも尊厳死協会のような活動もあるが、刑法を変えるまでの勢いはない。
福祉とは何かが問われている。生きている者はいずれ死ぬ。この例外はない。
長く生きるか、太く生きるか。要するに生き方に関する考え方の相違なのだ。
要は自分らしく生きること。
それが保証されるのが究極の自由社会だろう。
ただし他者に物心両面において迷惑をかけないという留保条件が付く。
終活カウンセラー協会顧問 喜多村悦史
元経済企画庁総合計画局計画官
元社会保険庁企画・年金管理課長/元内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官
総合社会政策研究所代表
1951年広島県福山市生まれ。京都大学法学部卒。1974年厚生省(現厚生労働省)入省。
保険局、年金局、保健医療局等で社会保険制度の企画・運営等に従事。
生活衛生局水道環境部環境整備課浄化槽対策室長、生活衛生局企画課長、
内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官等を歴任
2020年07月24日