怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記118 種の繁栄はエゴのため

― 人間を含め、動物は「種の保存」や「種の繁栄」のために行動する。―
 たいがいの人がこのように信じているが、まったくの間違いであると、動物行動学研究家でエッセイストの竹内久美子さんが述べている(産経「正論」2020.10.19)。これには豊富な実証があるとする。例えば、ある種のサルの群れは一頭のオスに統率される。そのオスは多数のメスをハーレムに囲い込み、自分の遺伝子を継承する子ザルを産ませる。しかしある日、力をつけた若いオスの挑戦を受けて打ち負かされる。ボスの座を奪われたら居場所がない。成人した息子ザルを連れて流浪の旅に出る。

たくさんの群れのサルは、屋外で食べ物を食べる の写真素材・画像素材 Image 16312662.
 ここで新たなボスが最初にすることは何か。動物学者の観察によると、前のボスの遺伝子を継ぐ赤ん坊ザルをすべて殺すことである。次世代を担うべき子ザルが淘汰されるから、種の繁栄に逆行する行動に見える。これが常態であれば種としてのサルの将来は危ういことになるか。
 実は乳飲み子がいなくなったメスは、数日中に発情と排卵を再開するから、新ボスの子どもが次々に生まれ、個体総数の減少にはならない。エゴ的行動は群れの衰亡には関係ないのである。
 ここで自分の遺伝子を残すエゴを抑えて、種全体の繁栄を優先するヒューマニズムに満ちたオスがいたとしよう。彼はエゴ的オスと闘わないためメスを獲得できず、自己の遺伝子を残せない。
 人間も動物である。自身の遺伝子を残したいエゴがあるはずだ。社会制度が“人口増を防ぐために経済的不利益を与える”等によってそのエゴを人為的に抑圧してきたとすれば、人口減という環境変化を踏まえ、政策を逆回転させるべきではなかろうか。

顧問 喜多村悦史

2020年11月24日