怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記126  在職者年金制限

「年金制度は難しい」が定番だが、これではまずい。国民の連帯で稼得能力を喪失した後の生計費を保障しようというのだから、保険料の納付者にも、年金受給者にも、「わかった」と評価される仕組みであることが制度設計の第一条件であると思う。
この観点で疑問は数えきれない。その一つがいわゆる在職老齢年金。具体事例を挙げよう。Aさんは1950(昭和25)年生まれの70歳。65歳で職場を引退し、相応の老齢年金を受給している。Aさんには妻Bさんがいる。1959(昭和34)年生まれで、Aさんより9歳若い61歳。Bさんは子育てが一段落してから再就職しており、厚生年金加入期間が通算で20年を超えている。ごく普通の夫婦事例である。

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老齢年金は原則65歳からの支給だが、年金支給開始年齢の経過措置があり、Bさんの生年の女性では、老齢厚生年金が61歳から支給される。Bさんはこれを機に退職して年金生活に入り、夫婦二人のんびり暮らしたいと考えた。
ところが相談に行った年金事務所で「旦那さんの年金が月額2万円ほど減るがそれでも良いのか」と念押しされた。
こういうことらしい。老齢厚生年金受給者に65歳未満の扶養配偶者がいると、加給年金年額22.4万円が付加される。ただしこの場合の扶養の条件は厳しいものではなく、妻が働いていても基本的にかまわない。Bさんの給料はAさんの年金より多いが、加給年金が付加されている。
だがBさんが老齢厚生年金受給権を得ると、共稼ぎだったBさんに厚生年金が支給されるからという理由で、Aさんへの加給年金支給は停止される。しかし、Bさんが勤めを再開し、年金停止になるほどの賃金を得れば、Aさんに加給年金が復活する。 

顧問 喜多村悦史

2020年12月02日