
怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~
介護施設では国家資格(介護福祉士)保有者を多数雇用していると、介護保険からの報酬に加算が付く。医療行為と違い、介護という業務には絶対に必要な資格がない。介護福祉士は、無資格の従業者より知識やスキルが上等であろうというに過ぎない。また当たり外れが少ないという期待ももてる。それで有資格者の活用を促進しようということで加算がされるのだと思う。
違う観点から加算を提案する意見がある。介護保険の報酬を議論している社会保障審議会の介護給付費分科会で、ある委員から「感染対策として取り組むべき要件を満たした事業所には、一定の加算をしてはどうか」との提案がされたという(読売10月13日)。
記事では詳細なニュアンスは不明だが、ほんとうにこう発言したとすると問題含みではないかと思われる。感染症の絶対防止は非現実的。この程度をもって基準にしようということになる。例えば手すりの消毒回数は日に○回とか。
その基準を満たせば加算付与せよというのだが、この場合、基準は推奨基準ということであり、満たさなくても事業実施に支障はない。
さてそうした施設で感染症事故が生じたとする。利用者に事故が起きた場合、事業者の過失(通常要請される防止努力を怠っていた)の有無が、刑事、民事の責任を分ける。基準不該当(加算を受けていない)施設では過失認定されやすく、基準該当(加算対象)施設では加算が認定されにくいことになりそうだ。加算受領を一種の免罪符にして、感染事故の責任追及を難しくする。そういう思惑が背後にあるのだろうか。
顧問 喜多村悦史
2020年12月16日