怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記147 コロナと社会保険料

 コロナで資金繰りが窮迫しているのはだれもが同じ。政府の力でなんとかしてあげたいという政治家の親切心はよくわかる。政治家は有権者の期待に応えなければならないのだから。

 だが自分たちの権限領域外のことへの不当介入をしてはならない。その重要な分野が社会保険。基本的枠組みはたしかに法律事項だが、運営は基本的に自律自治でなければならない。そうでないと加入者の相互連帯の精神が壊れる。

 コロナで事業苦境に陥った事業者の社会保険料を免除してはどうかと安易に提案する馬鹿者がいる。免除すれば保険の財政計算が狂ってしまう。

 その結果は、保険料引き上げか、さもなければ法定の保険給付の不履行である。そうした事態になれば、社会保険制度への信頼はなくなる。あほらしくて保険料を納付する者はいなくなる。

 せいぜい保険料納付の猶予、延期がせいぜいのはず。しかしそれも避けたい。その方法はある。今回のコロナでは、政府から事業持続化給付金などが支給されている。

 その資金のうちから厚生年金、健康保険などの社会保険料を天引き徴収すればよいのである。逆に言えば、事業持続化給付金の金額設定において社会保険料を織り込むだけのことなのだ。

 

フリーランスで加入できる社会保険とは?種類と保険料について | THE LANCER(ザ・ランサー)

 

 国民年金、国民健康保険の個人加入型保険では、政治的配慮と称して保険料免除をし、その必然である財政悪化対策として保険制度への国庫補助新増設で対応することが繰り返されるが、社会保険制度の本質をわきまえない最低最悪の愚策である。

 加入者は規約どおりに保険料を納付しなければならない。社会保険は、衣食住費同様の基礎生計費なのだ。災害などの被災者に一般政府が補助や交付金支給をする際には、その金額算定の必須項目としてその人が負担すべき社会保険料を組み込む。これにより、加入者間の公平を壊さずに、被災者の受給権を守ることができる。

災害や緊急事態にもおいても、国民生活の基盤をがっちり守るのが社会保険制度。政治の思惑で根幹部分をぐらつかせてはならないのである。

顧問 喜多村悦史

2020年12月25日