怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記156 医療費一部負担の意味再確認

 だれもが“公平に”保険料を負担していることになっている。その前提に立ち、病気になったときも“公平に”治療サービスを受ける。

 以上が「国民皆保険の神髄」のはず。そう考える人に、この続きを読んでもらいたい。 

 保険料を負担しているのに、なぜ受診時にも一部負担があるだろうか。理由はただ一つ、一部負担があることで、今ただちに診療所に駆け込むべきかどうか、一息入れて考えてもらうためだ。

 そして何割かが足をとどめることで、医療費の総額を抑制でき、保険料の高騰を抑えることができる。

 この受診時一部負担はいくらであるべきか。一律○千円という考え方もあれば、一律○割という考え方もある。そして採用されているのは後者で、3割である。

 ところが高齢者はこれが1割と低く設定されている。老齢年金が行き渡っていなかった時代の名残りである。1961年に本格実施された国民皆年金から60年。老齢年金は高齢者に行き渡ったと考えてよい。

 そうすると高齢者ということだけで、一部負担割合を低く抑えておく必要性はなくなった。それが高齢者の一部負担割合を1割から2割に引き上げる理由であろう。

 であれば全員一律に2割にすればよいはずだ。そしてさらに準備期間をおいて3割に引き上げる。これが市民感覚的公平である。

 

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 ところが政府の考えは迷走気味だ。2割負担になる者の比率をどうするかでもめている。低所得高齢者は1割負担に据え置き、高所得高齢者は2割に引き上げるというのだ。

 しかし、一部負担の趣旨が先のように総医療費抑制のための受診抑制であるのだから、ここで所得は関係ないはず。

「低所得者1割負担、高所得者2割負担」にもっと傾斜をつけて、「低所得者0割負担、高所得者10割負担」としてみれば一目瞭然だろう。

 高所得者は保険給付がされないことになる。保険料負担と組み合わせるともっと鮮明だ。

 保険料は所得に比例する。そこで高所得者が保険料を負担し、低所得者が医療サービスを受ける構図になる。高所得者が負担し、低所得者が受益する。

 これでは単なる所得再分配制度であり、健康な者の負担で傷病状態の者に医療サービスを行きわたらせるという目的がすり替えられてしまうことになる。

 ちなみに低所得高齢者の典型は、現役時代に年金保険料を滞納して老齢基礎年金受給資格がない者である。

顧問 喜多村悦史

2021年01月06日