怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記167  ハンガリーの少子化対策

もっとまじめに出生数増加を考えようよ。これが今日のテーマ。参考になるのが欧州ハンガリーの少子化対策。「ハンガリーってどんな国?」が聞こえるが、学校の歴史授業で「オーストリア=ハンガリー連合帝国」を習ったはず。もっと昔には「フン族の大移動」でも知られる。

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 ハンガリーのオルバーン首相が令和元年12月に来日した際の歓迎晩餐(さん)会で安倍総理(当時)はこう述べている。

「ハンガリー人のルーツは、アジアにあり、言語も欧州では唯一名字と名前の順番が日本と同じで、どちらの国民も大の温泉好きであるという点でも私たちは似た者同士であります。ハンガリーが伝統的な親日国であることや勤勉で律儀な国民性も日本人の共感をよんでおり…(以下略)」(内閣官房内閣広報室)。

 ハンガリーの人口は980万人。旧ソ連のくびきの元で呻吟していた東欧諸国の一つで、人口減少が続いている。解放後の自由化で経済は上向いてきたが、国民が減るのでは国家は衰亡する。そこでどうするか。「移民に頼らない。国民が子どもを産めばよい」が現在の国策。オルバーン政権の1年で、子どもを望む国民が過去10年に2割増えた。結婚数は前年比6.7%増で、離婚は60年前の水準に下がった。20歳から64歳までの女性就業率は75.3%に上昇した。

人口政策は国家百年の大計。合計特殊出生率は10年前の1.3から1.4に上昇してきている。この勢いで上がり続けさせることを目指している。

結婚すると税額控除が受けられ、子どもが増えると所得税が軽減され、4人産むと定年まで所得税を納める必要がなくなる。妊娠手当、7人乗り大型新車の購入資金補助、育児休暇3年などうらやましい制度が並ぶが、注目したいのがローン対策。

夫婦は40歳までに3万ユーロ(1ユーロ=約125円)の無利子融資を受けられるが、第1子を産むと返済が3年間猶予、第2子では3年猶予に加えて元本の3割帳消し、第3子で全額返済不要になる。この仕組みは学費ローンにも適用されるから、3人出産で学生期の借金からも解放される。大卒女性には保育料給付制度もある。

女性には、大学までしっかり勉強してもらい、卒業後はバリバリ働き、家庭を持ってたくさん子どもを育ててもらう。スーパーお母さんを期待しているわけだ。独身生活を謳歌するのは自由だが、経済的恩恵はない。というか、母親支援の財源負担者になる。子を育てない者から、育てる者への所得移転が徹底している。

少子化対策に充てる費用がGDP4.7%。ちなみに日本では0.8%。諦めることはない。ハンガリーもここまで来るのに10年を要している。

2021年01月12日