怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記178 ワニの口、裂ければ死ぬ

政府には通貨発行権があるのだから、国債はいくら発行してもかまわないのだと真顔を語る者がいる。それが正しいなら、税金の徴収は要らないことになる。無税国家。しかも政府から無尽蔵に給付金が支給される。だれも働くことはない。そんな社会があるはずがない。

 2020年度の新規国債発行額は112兆円を超える。政府予算案ではそんな額ではなかった。それもそのはずで当初予算では小さくしておき、年度が始まってから補正予算として国債発行を盛り込むのだ。当初予算と違い、野党も本気で内容を審査しない。というかむしろ政府や与党といっしょになって、大盤振る舞いというか、バラマキ競争に乗っかるから、チェック機能がないのだ。

 一方の税収は、当初予算より8兆円も下回り55兆円前後。差し引き57兆円の単年度赤字の垂れ流しになる。もはや財政規律はどこにも存在しない。将来世代のことなどどうでもよいらしい。

 歳出が歳入よりも大きい。しかもその差がとてつもなく大きくなっていく。歳出の推移をワニの「上顎(あご)」、税収の推移をワニの「下顎(あご)」に見立てると、上下に口を開いたように見えることから名づけられている。

 

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 ワニの口を閉じるべく、歳出縮減をしなければならないのだが、歳出が歳入の2倍を超えるようになっては、もはや収拾はできないのではないか。なによりも政府や議員、加えて国民の多くにその気がない。もはや財政破綻しかあるまいと投資家が感じるようになったときには、低利率の国債の引受手はいなくなり、実際に財政も経済も破綻する。

 おカネは天から降っても来なければ、地から湧いても来ない。国民が額に汗して働き、その一部を税として納付する。政府はその中でやりくりする。それが常道というものだ。政府がⅠ千兆円の借金を抱えてもいまだ破綻していない。それは事実だ。しかしこれをもって借金には限度はない、まして借金を積み増すことが正しいことの証明にはならない。

顧問 喜多村悦史

2021年01月24日