怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記182 史上最悪ウイルス?

マスコミ論調はどれも同じ。その一つ、産経新聞のトップ記事(1月28日)は、新型コロナ感染者が世界で1億人(77人に一人)を超えてなお終息が見通せないことなどから、「人類史上、最悪のウイルス」としている。

 細菌やウイルスの発見自体がごく最近のこと。新型コロナを史上最悪とみなす根拠は何か。同紙は①感染ペースが結核や重症急性呼吸器症候群(SRAS)を上回ること、②症状がすぐに現れず感染拡大を防ぎにくいことを理由に挙げている。生半可な封鎖では効果が低いことが理解できる。

記録が残る世界流行感染症には、スペイン風邪(1918年流行で6億人感染し5000万人死亡)、2002年のSARS(2002年に流行で8100万人感染し800人死亡)が知られる。恒常感染症の結核は2019年だけで1000万人が新規感染し140万人が死亡している。今回の新型コロナには1億人が感染し215万人が死亡した。

 こうした数値を見れば「世界最悪」と形容したい気持ちは分かる。だが世界最悪の感染症は新型コロナで終えるのだろうか。過去にはヨーロッパの総人口の3分の1を死に至らしめたペストのようなものもある。コロナ以上の災禍をもたらす感染症は、今後もあり得ると考えるべきではないのか。実は過去にもあったが、病原体が認識されていなかっただけの可能性が高い。

 現下のコロナ対策はたしかに必要だろう。同時に、今後も生じる同レベル以上の新規感染症への備えをどうするのか。同じように右往左往のドタバタを繰り返すのか。今はそのような先のことまで考えても仕方がないということか。

 

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 ちなみに現時点で感染者数が大きいのは①アメリカ2540万人、②インド1060万人、③ブラジル890万人、④ロシア370万人、⑤英国370万人。同紙は他に日本の37万人と、人口10倍超の発生地中国のわずか9万人を比較掲載している。これだけ見れば、民主主義は感染症蔓延に弱く、専制集権政治体制であってもロシアのように中途半端では効果がない。中国首脳部は「コロナは収束できる。世界人民は中国に感謝し、見習え」とするが、多分本気の本音なのだろう。

 コロナが契機になって民主主義体制を否定すればいいのか、それとも感染症への脆弱性は民主主義維持の代償と考えるのか。二兎を追えば虻蜂取らずになる。政治リーダーにはこの点での考えを率直に述べる責務がある。  

顧問 喜多村悦史

2021年01月28日