怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記186 介護保険料差し押さえ最多

介護保険料を滞納して、預貯金や不動産といった資産の差し押さえ処分を受けた65歳以上の高齢者が、2018年度は過去最高の19221件にのぼった(朝日20201011日)。

介護保険に加入している65歳以上は3525万人。保険料は基本的に加入者本人に支給される公的年金から天引き徴収され、この場合には滞納はあり得ない。

残り1割の普通納付対象者が納付を怠り、度重なる納付要請にも応じず、最終的に督促状が発行されても知らぬ顔を決め込んでいる場合になって、初めて財産差し押さえになる。普通納付対象者の0.5%が差し押さえ処分を受けたというのは、かなり深刻な事態ではなかろうか。

介護保険料には低所得者対策として様々な減免措置がある。当人の所得に対して過酷な保険料額設定はない。生活扶助受給者では、保険料が扶助費に加算されるから、加入者の実質負担はない。

 

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差し押さえ処分を受けたということは、その人に相応の余裕資産があったことを意味する。日常生活に必要な物品は差し押さえの対象外なのだ。

65歳以上(第1号)被保険者にかかる保険料未収額は2018年度で236億円。第1号被保険者が納付すべき保険料総額は約2兆円。公的年金が年間18万円に達しない者が普通納付対象である。

人数的に約1割だが、保険料調定額では1割をかなり下回るはずであるから、未納率は相当高率であるはずだ。

現役時代に国民年金保険料を滞納した者が低年金受給者になり、介護保険では保険料の普通納付者になる。そして高率で介護保険料を滞納する。これは構造問題である。

医療と異なり、介護サービスの不支給が直接に状態の重度化、死亡に直結するわけではない。介護サービスを購入る費用の思弁を受けられないだけだ。

しかるに現在の制度では、保険料の悪質滞納者でも利用者負担の1割が3割になるだけだ。確信的な保険料滞納者に給付を受けさせる必要があるのか。

介護保険の給付を重度者(例えば要介護4以上)に限定することで、保険料水準を下げて滞納へのインセンティブを下げるのが一つ。そうでなければ介護保険を任意加入性に改める。その決断が求められている。

顧問 喜多村悦史

 

 

2021年02月03日