怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記190 自営業者への休業補償

自営業者が業務を停止すれば収入はゼロになるから、廃業保障があれば助かる。(A

自営業者が仕事を休めば売り上げを得られないから、休業保障があれば助かる。(B

 自営業者だって人の子。商売が順調なときもあれば、そうでないときもある。家族の都合で休まなければならないときもある。

 だが社会保険は雇用労働者中心に組み立てられていて、自営業者は除外されてきた。例えば(A)のように事業が景気の波などの影響で不振になった場合、見切りをつけて転廃業するのが賢い方法だ。今回のコロナ外出自粛のあおりを受けた零細個人営業の飲食店では、退出と他分野での再出発を考えたい人は多いはず。

ボクは20年も前、内閣府の経済社会総合研究所にいる時点で雇用保険の失業給付を自営業者に適用することを主張している(ESRI Discussion Paper (ディスカッションペーパー)No.26。単行本では『社会保障改革への処方箋』など)。だが、いまだに本気で取り合ってくれる政策集団はない。

 そうしたなか「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金」なる制度が作られた。“コロナと名付ければ何でもあり”のバラマキ給付制度の一つだが、対象者が自営業者であるところに新規性がある。昨年2月末から一月間の小学校等休校措置。思い付きで始まり教育的には明らかにマイナス効果だったが、副作用として家庭にとどまる子どもの世話をどうするのかと大批判になった。そこで泥縄式に始められたのが「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」制度。

 従業員が子どもの世話を理由に有給休暇を取った場合に、政府が事業主に年休賃金を補填するというものだ。年休は労基法で有給とされており、事業主が負担するのが当然。それを政府が肩代わりするのがそもそもおかしいのだが、コロナと名付ければ筋の善し悪しは関係ない。

コロナ休校中以外にも対象が拡大し、発熱でコロナ感染が疑われるとか、コロナ感染すると重症化のおそれがある疾患をもつ子どもも対象になり、休校とはどんどんかけ離れ、コロナが息の根を止めるまでの恒久事業の様相を帯びている。給付金額も115千円にまで高額化している。

 

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 どのような制度でも受け取る者にとっては朗報だ。雇用労働者の年休取得に伴う会社のコストを政府が“助成”するのであれば、自営業者が同様の理由でこどものために仕事(業務委託契約等)を一時的にお休みする場合にも政府から援助してもらいたいとなり、ほぼ同一内容の“支援”が行われることになった。

 ということで自営業者に対する(B)がコロナという瓢箪から駒で実現した。だが自営業者にとって真に必要と思われる(A)は政策の俎上にも上がっていない。コロナという一過性(そうなるかどうかは今後次第だが)のことで右往左往するのではなく、自営業者に対する社会保障、とりわけ社会保険のあり方を考えれば、雇用保険を自営業者にも拡大するなどで(A)の方から考えていくのが論理的思考であると思われる。

顧問 喜多村悦史

2021年02月04日