怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記193 国家的視点で北方領土を考える

北方領土問題は51回(2020919日)でも取り上げた。言いたいポイントは一つだけだ。「スターリンのソ連に不当に奪われた領土を本心で返せと言うのか、言わないのか」。

 昨日27日は政府が定めた「北方領土の日」だった。制定の経緯はウィキペディアによると、昭和50年代に入り、北方領土返還運動の高まりから、青年、婦人、労働の各団体において「北方領土の日制定」を求める決議が次々と行われるようになった。

そして、1980年(昭和55年)には、衆参両院において「北方領土の日」の設定を含む「北方領土問題の解決促進に関する決議」が全会一致で決議されたのを始め、全国の都道府県議会や市町村議会、全国知事会、全国市議会議長会、全国市長会、全国町村会などにおいても同様な決議が行われるようになったことを受けて、

政府は「『北方領土の日』に関する懇談会」が開催し、その答申を受け、1981年(昭和56年)16日に毎年27日を「北方領土の日」とすることが閣議了解によって決めた。けっして一部の声ではなかったのである。

 

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なぜこの日なのか。江戸時代末期、南下してくるロシアを食い止めるため、幕府(代表:勘定奉行川路聖謨)とロシア(代表:プチャーチン提督)との間で領土を含む条約が結ばれた。その締結日、安政21221日は現代歴では185527日であったことに由来するとのことだ。

この条約では、択捉(エトロフ)島と得撫(ウルップ)島の間に国境線が引かれ、樺太においては国境を設けず、これまでどおり両国民の混住の地とすると決められていた。

 ボクの高校時代(昭和40年代前半)の思い出は51回に書いたが、北方領土問題を口に出すのははばかられる雰囲気だった。北方領土の日制定には、そうした間違ったムードを振り払うべしとの国民の支持があったのだと思う。

 産経新聞は3人の識者から「領土は合法的にロシア領になったと前言を一方的に翻して不法占拠を恥じることがないプーチンにいかに向き合うか」の見解を聞いている(「論点直言」202127日)。

 国際政治学者のグレンコ・アンドリー氏。日本政府は「北方領土問題を解決して平和条約を締結する」というが、そのアプローチからして根本的に間違っていると思う。北方四島は不法占拠されているのだから、ロシアへの要求事項は「全島の返還」でしかありえない。

「問題を解決する」などという課題設定では、「日本の四島放棄が解決策だ」といった主張をロシアに許しかねない。日本が独裁国陣営のロシアと深い付き合いをする必要は全くない。逆にロシアを追い詰めて譲歩させるべく民主主義陣営の連帯を強めることが大事だ」。

 参議院沖縄・北方問題特別委員長鈴木宗男氏。「平均年齢が85歳となった元島民らの願いは、一島でも二島でもいいから、早く返してもらいたいということ。平和条約締結後に歯舞(ハボマイ)群島と色丹(シコタン)島を日本に引き渡すことを明記した共同宣言に沿い、この二島の返還と残る二島の自由往来や共同経済活動などを組み合わせた「二島返還プラスα」しか現実的な解決策はない。

 青山学院大名誉教授袴田茂樹氏。「日本は一方的な期待で譲歩を重ねてきた。経済協力を基礎に新しい解決のアプローチを提示したが、ロシア側は領土を棚上げして経済協力関係を構築する提案と受け取った。国家主権の問題は単なる国の体面ではなく、独立国として死活問題だ。日本の姿勢を世界は注視している。少しでもないがしろにすれば、外交や安全保障で連鎖的に深刻な結果をもたらしかねない。甘い期待ではなく、真剣勝負で臨まなければならない」。

 三者三様のように見えるが、あなたはどの考えに賛同、同調しますか。

顧問 喜多村悦史

2021年02月10日