怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記196 現代美術を見に行く

近頃の日課は散歩。こんなところにあれがあった。そういう発見がおもしろい。木場公園もコースの一つ。その一角に東京都の現代美術館がある。

「石岡瑛子の絵を展示しているから見に行こうよ」というので、前まで行ったが、入場料でひるんでしまった。1800円。二人ならば3600円。ちょっとした夕食価格だ。

ところで石岡瑛子ってどういう絵を描いた人? 家内に呆れられてしまった。「前田美波里が登場するポスターを見たことないの?」

ごめんなさい。前田美波里ってだれ?

石岡さんは渋谷パルコや角川書店の広告作りでも活躍し、活躍の場所がニューヨークであったこともあって、国際的にも著名人だったようだ。ボクがあまりにも無知なので改めて作品を見に行くことになった。ただし場所を変え、銀座6丁目のギャラリーで開催されている入場無料の展示会。ネットでこうした情報が入手できるらしい。小一時間、散歩を兼ねての遠出である。

会場にはけっこうな数の入場者がいた。若い女性が大半なのに驚いた。一角で一連の作品をビデオで流していた。なるほどセンスがいい。そこまでは言えるが、「見たことあるでしょう」には、「記憶にございません」。

現役時代のボクは文化度が低い生活をしていたことになるようだ。

会場には石岡さんの発言が短冊状に展示されていた。記憶に残ったのは「表現はスタイルではない」。歌舞伎などは様式から入るが、現代芸術は形式にこだわらないということだろう。

もう一つは彼女が東京芸術大学受験準備で通っていた美術学校でのできごと。ある日手袋を写生する課題が出された。他の学生が手袋をどのように描写するかで腐心するなか、彼女は人の手を描き加え、手袋の用途を表現した。この気持ちは分かる気がした。

 

 

 せっかく散歩に来たのだからと銀座を散策した。すずらん通りに小さな画廊があり、前に呼び込みの女性がいた。ボクの前を歩いていたスーツ姿の男性にパンフレットを差し出して入店を促していたが、男性は急いでいる風で行き過ぎた。ボクは暇だし、店内の絵画を見てもいいかなと思ったのだが、呼び込み女性はボクから視線を逸らし、後ろから歩いてくる別の男性に近づいた。

ボクを素通りしたのはなぜか。「あんたは逆さにしても絵なんか分からないし、豚に真珠のようなものでしょう」と鑑定されたようで、かなり傷ついた。

顧問 喜多村悦史

2021年02月10日