怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記199 米中ブロックの優劣

「バイデン新大統領の就任で米中対立の緩和を期待する人も多いが、実際は米中冷戦構造がより鮮明になるだろう。習近平政権の強権的、非民主的な本質は民主党と相いれないからだ。

商機によって政策が揺れたトランプ前大統領よりもバイデン政権の方が一貫した対中強硬姿勢をとるとみるべきだ」とする記事が目に留まった(「米中「ブロック経済圏」の優劣」『選択』47巻2号)。

 記事は両陣営の構成と実力を比較している。

 アメリカ陣営は民主主義と自由市場経済を共有する国々。G7、インド、オーストラリアなどが構成国であるとする。わが日本は憲法の前文で繰り返し強調する民主主義を持ち出すまでもなくアメリカ陣営に区分けされる。この点について頭の整理がついていないビジネスパーソンや政治家がいるようなのが気になる点ではある。

 対する中国陣営に属するのは専制体制のロシア、イラン、ベネズエラのほか、カザフスタンなど中央アジア諸国、それにカンボジア、ミャンマー、タイなどの東南アジア、さらに一帯一路で中国マネーに吸い寄せられた途上国。政治層がアメリカと折り合いが悪いブラジルは中国陣営に区分けされている。

 なお記事では「韓国の文在寅政権は右顧左眄する中双方から見限られつつある」として、童話のコウモリ扱いで突き放されている。両相対立する両陣営の激突時には、日和見は命取りになる。あやふやもダメ。旗幟鮮明が信頼と支援を得る唯一の方法。

 項目別の勢力比較に移る。

まず人口面。アメリカ陣営では、10億超えのインドを別格に、アメリカ、インドネシア、メキシコ、日本、フィリピンなどが含まれ、総数では31億人。対する中国陣営は親分の中国が14億人で抜きんでるが、パキスタン、ブラジル、ナイジェリアなどの2億人国やロシア、イランなどがあり、総数31億人。ということで互角。

次に国力の基礎となるGDPだが、先進国中心のアメリカ陣営が55兆ドルと中国陣営の22兆ドルを引き離している。ただコロナでもプラス成長を維持する中国を侮れず、2028年にもアメリカを追い抜くと予測している。ただ中国陣営で発展を持続しているのは中国のみで他の構成国は経済力や成長力に不安がある。アメリカ陣営が結束を保つ限り、経済力での大差は維持されるだろう。

 

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軍事面では中国の軍拡が加速の一途であり、単体軍事費ではすでにアメリカと肩を並べている可能性がある。二番手国ではアメリカ陣営ではインド、サウジアラビアに続いてフランス、ドイツ、イギリス、日本と同水準で並ぶ。対する中国陣営ではロシアのミサイル、戦闘機が目立つ程度。中露を除けば軍事力は弱小との評価であり、ここでもアメリカ陣営の結束力がカギになる。

科学技術面を学術論文数や研究開発費で評価すると、アメリカ陣営はアメリカ、日本、ドイツなどとなるが、ここでも単体国では中国にかなう国はない。しかも中国の増加速度はどこよりも大きい。アメリカ陣営が束になっても科学技術面で中国にかなわなくなる日が近づいている。

資源面では、石油を例にとるとアメリカ陣営ではアメリカほかにサウジアラビア、カナダ、クウェートなどがあるが、中国陣営ではベネズエラ、イラン、ロシアなどがあって拮抗している。ただし天然ガスになるとロシア、イラン、トルクメニスタンなどを有する中国陣営が圧倒する。レアメタルでも中国が圧倒的シェアを握る。

食料面では、穀物を例にとると、アメリカ陣営ではアメリカ、インド…、中国陣営では中国、ブラジル…と互角。輸出余力では、技術面の優位性でアメリカ陣営が圧倒していると評価される。

記事はここまで。世界がどうなるかは書かれていいない。各自で想像せよということだろう。

20世後半の米ソ冷戦は、ソ連ブロック国の経済的自滅でアメリカ陣営の勝利に終わった。21世紀前半の米中対立はどうなるか。シナリオは3通りしかない。

①前回同様、自由・民主主義陣営が、共産主義を標榜する専制・独裁体制諸国を崩壊に追い込む。

②前回とは逆に、自由・民主主義諸国が自壊し、世界中が専制・独裁体制に移行する。この場合、世界は中国共産党によって一元支配されることになる。

③両陣営が雌雄を決するべき熱戦に移り、核兵器、生物兵器、化学兵器、電子兵器、宇宙兵器…がこれでもかとつぎ込まれる。 

顧問 喜多村悦史

2021年02月14日