怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記200 一帯一路全域の支配を目論む

悪の帝国ソ連が崩壊して民主主義国の人々が平和を感じた1990年からおよそ30年。平和はやはり蜃気楼であった。

ミャンマーで軍部がクーデターを起こした。背景は分からないとされているが、ニンマリ笑っている者がだれかは、だれにでも想像できる。中国はかねてからミャンマーを経由してインド洋への回廊を求めていた。ミャンマーの軍事政権は国民の支持がなく、西側民主主義国からの批判を跳ね返すために中国にすり寄るだろう。

物心両面の支援の代償として、軍事基地を提供し、港湾の半永久租借を認めるから、インドは喉元を抑えられ、インド洋の覇権も中国のものになる。「明の時代の鄭和が艦隊を率いて航海したことがあるのだから、この海域は中国の領域である」。南シナ海でと同じく、荒唐無稽な論法を押し通すことだろう。

中国の膨張は海にとどまらない。陸地でもかつてのシルクロード沿いの地域を併呑しようとしている。手始めはかつてソ連の領域であった中央アジア。アフガニスタンの間の世界の屋根と言われるパミール高原に位置するタジキスタンという国がある。その領土内にはすでに中国軍の基地が無断で作られている(中央アジアで高まる反中国」『選択』47巻2号)。

かつて幻奘法師が経典を求めてインドに赴く際に通過した地域だから「歴史的に中国領」というつもりなのだろう。ソ連時代には無言だったのに、タジキスタンの独立以後言い出した。後はいつもと同じで、中国の主張に反する言論は歴史の歪曲であると攻撃する。

 

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タジキスタンの北に位置するキルギスにも攻勢をかけ始めている。曰く「この地域は古く漢王朝の領土であったから、中国領でなければならない」。その西のカザフスタンに対しても、「その昔、中国王朝の属国だったことがあるから、中国の主権が及ぶべきだ」と。中国政府のウイグル族に対するジェノサイド(民族抹殺)被害はカザフ族にも及んでいる。

同族へのカザフスタン国民の同情は深い。これに逆手に取り、中国はカザフスタン政府へ「カザフ族への支援をするな」と「反中活動をしないよう厳しく監視しろ」と要求している。カザフスタンに眠る鉱物資源について今では中国人がしきっており、カザフスタン政府の公金はむさぼられ放題という。

中国の矛先は北極海にも向かっている。北極回りの海洋航路を開拓して独占支配する。宇宙でも月や火星の資源を独り占めにする気だ。習近平の目に日本はどう映っているか。天安門事件で世界から孤立した中国を支持し、経済支援を続けたのは日本だけ。

だがそれは中国共産党には都合が悪い事実だから、“史実”であってはならない。中国は自力で成長したことになっている。そうすると結論は明白だ。「日本という国は存在してはいけない」。歴史は勝ち残った者によって書かれる。

今年7月は中国共産党の100周年という。オリンピックの開会予定時期。このとき何が起きるだろうか。歴史家、政治家の予想はあるのか、ないのか。

国難はコロナだけなの? そういう問いかけすらしてはいけないムードになっているのが一番の国難、亡国の始まりのような気がする。

顧問 喜多村悦史

2021年02月15日