怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記201 囲碁は領土取りゲーム

NHKの囲碁トーナメントには選ばれたトッププロが登場する。他の大会と異なり、この試合は持ち時間がなく、初手から一手30秒。時間に追われて、シチョウを間違えたり、コウ争いでコウ材を数え損なったりしたのでは、一瞬で終わってしまう。

ボクたちレベルでは珍しくないが、さすがにトッププロではこの種のポカがほとんどない。まして大石が一網打尽になるなど慮外である。このためどんでん返しなどのドラマ性に欠け、見ている側としては面白みに欠ける。

ボクたち初級者から見ると、まだこれからと思える段階で一方が投了し、解説者が「反目の差は埋まらないから仕方がないですね」。当方「???」

 この点ビデオで見返した試合(放送日2020年10月11日)は面白かった。勝者は高尾紳路9段だが、二度も大石を取られながら、中押し勝ちしたのだ。高尾さんは白番。左辺に大模様を広げた代償で、右辺の十数個の石が包囲されてしまう。

万事休すかという瀬戸際で、黒のほぼ確定地であった右隅に侵入し、振り替わりに持ち込んだ。ただし失った石の数では、まだ釣り合いが取れていない。

 

「囲碁 フリー」の画像検索結果

 

 手番を取った黒は左辺の白模様に打ち込み、ここで活きるか、右辺に接続すると黒の勝勢が確定する。“生き死に”をめぐる攻防になるのだが、黒の妙手で包囲網が破られ、下辺の別の白石がとられてしまう。ところがこの折衝の過程で、先に取られたはずの白の大石が復活してしまう。また、左辺模様の半分を白地にまとめることに成功する。ここで黒が投了。素人的には黒には次の白石に襲い掛かる余地がありそうだったが。

 攻め合いに二度も勝ったのに、試合は負け。囲碁で取り合うのは、石ではなくて、地(領土)の広さ。囲碁は戦略のゲーム。戦国武将が囲碁を好んだ理由がわかった。

顧問 喜多村悦史

2021年02月16日