怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記211 “腐”動産ビジネス

 人口が減ると何が起きるのか。日本では有史以来、人口が大幅に、かつ、継続的に減る経験をしていない。しかし、今後は未体験の事態が次々と起きてくることになる。
 例えば住居。つい先年まで、リゾート地のタワーマンションを別荘として保有していることは、ステータスでもあったし、価格は年々上昇するので、これを売れば、都心の有料ロージンホームに移り住むことができた。
 温泉とスキーが楽しめる湯沢町で起きていることは、これまでの常識が覆り、家、すなわち不動産が、“腐”動産に転じることをまざまざと見せつける。榊淳司さんのレポートの要点を紹介しよう。


越後湯沢リゾートマンションは「負動産」から「腐動産」に転落 | 富裕層向け資産防衛メディア | 幻冬舎ゴールドオンライン (gentosha-go.com)
 湯沢町の別荘マンションの年間維持管理費は、管理費や修繕積立金、固定資産税などを含めれば、30から50万円はかかっているだろうという。
 歳を取り、使う日数が少なくなってくれば売ろうと考えるのが自然だが、売値をどれだけ下げても買い手がつかないのだそうだ。そうしたなか、最近、「なんとか手放せないものか」と考えている所有者の弱みに付け込んだ“悪徳”ビジネスが登場しているとのこと。
 別荘の写真素材|写真素材なら「写真AC」無料(フリー)ダウンロードOK

そのビジネストークは、「3年分の所有経費を払ってくれたら、区分所有権をもらってあげますよ」というもの。現所有者から3年分の管理費や修繕積立金、固定資産税などの総額相当を払わせることで、所有権を自社関連の法人に移転させるのだ。年間管理経費を50万円とすると、オーナーがその3年分150万円をつけて会社に渡す。会社はマンションをタダで手に入れた上に、おカネまで手に入る。
 オーナーは物入りだった別荘マンションを処分できて一安心だが、会社は引き取ったマンションをどうするのか。今後は会社が管理費や修繕積立金、固定資産税を負担することになるのだが、そうはなっていないだろうというのが榊さんの推測だ。
懐に入った150万円はそのまま利益。マンション所有者として果たすべき義務は果たさない。マンションを転売する素振りはするが、元のオーナーがどうにも売れなくて投げ出した物件である。売れるわけがない。だれからも管理費や修繕積立金、固定資産税を払ってもらえない管理組合や湯沢町は困り果てるが、打つ手がない。
管理不十分の空き家が増えるのはまずいので、管理組合が落札する手もあるが、それも景気がよくなれば購入希望者が出てくるとの当てがあればこそ。長期的な人口減状況では、売れる見込みがない。そうした状況で管理組合が買取り決議をすると、将来背任の責任を問われかねない。
 以上は湯沢町のことだが、今後は全国いたるところで同じことが生じる可能性がある。それが人口減である。空き家が増えないための方策は、住宅の新築を原則的に認めないこと。これに尽きる。リフォームを重ねても、住宅はいつか使えなくなる。新築を認めず、リフォームだけにしておけば、人口減と住宅数減が釣り合って、住宅価格の値崩れは避けられる。理論的には常識的なのだが、国も住宅メーカーも新築を煽り、国民もそういうものかと煽られるままに家を建てている。30年、40年後が心配だ。

                                           顧問 喜多村悦史

2021年02月26日