怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記214 スマホが子どもの脳を壊す

東北大学の川島隆太先生(加齢医学研究所長)が恐ろしい警告をしている。

スマホの有害性を指摘した『スマホ脳』(アンデッシュ・ハンセン著、久山葉子訳、新潮新書)がベストセラーになっている。スマホを使う子は成績が下がり、学校での使用を禁止すると成績が向上したとし、その理由として、スマホ使用による睡眠不足、運動不足が学力に影響するのだろうと推論している。

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川島先生の主張は、同書の指摘は生ぬるいというもので、仙台市の小中高校生対象の継続調査で分かったことを紹介している。睡眠時間の長短、学習時間の長短に関わらず、スマホ(タブレットを含む。以下同じ)の使用時間が長くなると、子どもは成績が低下する。11時間未満であれば影響はないが、それを超えると使用時間が1時間増すごとに、国語2.3点、数学4.6点、理科3.8点、社会3.8点ずつ下がっていく。

その理由を川島先生は次のように言う。スマホにはさまざまな機能が盛り込まれ、アプリを切り替えることで音楽、ゲーム、動画、LLINEでのやり取りなどに同時並行的にアクセスすることになる。しかし普通の能力の人間の脳は、同時には一つのことしか集中的に処理できない。スマホのマルチ機能に追いつかない人間の脳は、気が散るばかりで、重要でない情報を処分することができず、せっかく獲得した重要な情報が頭から消えてしまうというのだ。「スマホを使うくらいなら、何もせずボーっとしている方がまだまし」だという。特によくないのがLINE。複数人との情報のやり取りに気を取られ、勉強の集中力や注意力を低下させることおびただしいという。

活字の本を読み、手で紙に文字を書いて覚える古典的手法を時代遅れとする風潮こそが危ない。体を動かして覚えることで脳や神経が発達するのだが、スマホ多用のいわゆる「GIGAスクール」では脳神経の発達が遅滞し、「自分で物事を思考できない人間が大量に生まれる」と川島先生は危惧している。専制国家の独裁者には、主体的に考えることをしない人民が望ましいが、民主主義社会では自立した人間が主人公である。

『スマホ脳』の著者は、スマホを最新のドラッグと喝破して、脳が未発達の子どもに持たせるべきではないと警鐘を鳴らしている。「日本政府にはいますぐにでも、18歳未満の子供のスマホ所持を禁止する法律を作ってもらいたい」と川島先生は訴える。スマホやタブレットを学校教育現場に持ち込むことなど冗談ではないということだ。「スマホは子どもの意思ではコントロールできない」ことを、社会も子どもも自覚しなければならないという主張である。

 しかしである。「われわれは2018年、スマホで子供の脳の成長が止まっていることを発見し、研究結果をまとめた学術論文を一流誌に発表、日本で記者会見も開きました。しかし新聞もテレビも、通信事業者や通信機器メーカーから広告費をもらっているからか情報封鎖され、まったく取り上げてくれなかったのです」。

 この主張が違うというのなら、マスコミや文科省はスマホやタブレットが長期的視点で勉学に寄与するとの客観的証拠を挙げて反論すべきであろう。「教育は国の礎、百年の大計」なのだから。

顧問 喜多村悦史

 

2021年03月02日