怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記219 年金情報が中国政府の管理下に?

ネットニュースの「時事ドットコム」(2月17日)によると、開会中の衆院予算委員会で立憲民主党の長妻昭副代表が、マイナンバーが業者を通じて中国で流出した可能性を指摘した。長妻氏は2009年の民主党内閣で厚生労働大臣を務めているなど、同党では年金問題のプロを任じている人物。
日本年金機構は個人データの入力を外部委託していたが、請け負った東京の情報処理会社が自分では処理せず、中国の企業に再委託していて、そこで500万人分の情報が流出したとの疑惑が生じた。明るみになったのが2018年。それまで年金機構は、中国企業に再委託されていたこと自体を知らなかったとされている。


 年金機構の特別監査では、再委託先の中国国内企業が抜き取り、外部に提供した事実は確認されなかったとされたようだが、そのまま信じていいのか。年金機構はマイナンバーを活用した年金個人情報の処理をなぜ外部委託したのか。その点で情報漏出リスクへの対応に根本的な認識上の問題があったのではないか。実際のデータ処理をしたのが中国企業であった。中国では純粋な民間企業は存在できず、大なり小なり政府の支配に属している。特別監査はこの構図を念頭において行われたのだろうか。
 中国では公地公民制。人民や企業の資産も制度的、理念的に、すべて政府が管理する。政府は共産党の支配下にあり、その共産党は永続的な専制支配を制度的に保証される。そして党の指導権は習近平という終身独裁者が一手に握っている。あらゆる情報は習近平氏の手中に集積され、政略的武器になる。中国政府はハッキングによって情報を盗み取ることへの違法意識はなく、窃取に成功したものは英雄扱いである。

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個人情報はその個人に管理権があるというわれわれ民主主義社会での常識は、中国政府には通じない。「逆さ社会」であるとの認識を持たなければ、真の問題を見逃すことになる。
 ニュースは「監査のきっかけになったとみられる通報メールは、長妻氏が厚生労働省から入手した」と指摘し、そのメールの差出者によれば、「マイナンバーを含む個人情報が中国のインターネット上に流出している」そうだ。長妻氏はこの公益通報的メールの内容の真偽をただしたが、年金機構の水島藤一郎理事長は、メールに記載されている情報は「基本的に正しい」が、マイナンバー情報の漏出に関しては「正しいものと確認させてもらうことは差し控えたい」と曖昧な答弁に終始したとのことだ。
 事務の簡素化、正確性の確保などの上で、個人情報の集積管理は必要だと思うが、それは悪用しようとする者の手に情報を渡さないことが当然の前提である。政府や公的機関が集めた国民の個人情報が、あろうことか敵性国家にいとも容易に渡ってしまうようでは安心して暮らせない。今回の漏出疑惑を教訓に、どのように個人情報を守るのか。ハッキング等への防御対抗措置をどのように構築しているのか。国民であり、年金加入者である者が知りたいのはその点だ。漏出の責任逃れのための言い訳ではない。
顧問 喜多村悦史

2021年03月09日