怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記226 日本をエネルギー大国にせよ

キャノングローバル戦略研究所の杉山大志さんが「日本をエネルギー大国にせよ」と主張している(産経「正論」3月12日)。
そのポイントは3つ。
第一は安定・安価なエネルギーで経済力を高めること。このためには原子力、石炭火力を堅持すること。
第二に菅義偉総理が「2050年にCO₂実質ゼロ」を宣言したこととの整合性だが、日本発の回収技術などによってCO₂発生量を削減することを目指す。
第三に有事に対するエネルギー安全保障として、供給の安定性や長期保存に向かない再生エネルギーやLNG(液化天然ガス)に過剰依存せず、「一度燃料を装荷すれば1年以上持つ原子力、石炭を貯蔵できる石炭火力」を重視すべき。
杉山さんは、いわゆるグリーン派の「気候変動」論に疑問を投げかける。グリーンブームの陰の主役、もしくは利得者がだれかという疑問である。


「太陽光発電の心臓部は多結晶シリコンであるが、世界生産の8割は中国であり、内6割をウイグル自治区が占める。…風力発電や電気自動車…は希少金属であるレアアースへの需要を高める(が)…中国及び中国系企業が世界の7割を生産する」。
化石燃料が放出するCO₂を諸悪の根源と決めつける国内のリベラルの人たちが、中国の太陽光発電がウイグル人の「強制労働で生産されている」ことをなぜ批判しないのか。民主主義国のグリーンブームが専制体制に利用される「陥穽はないか」。中国への警戒を怠ってはならず、グリーン投資では中国「排除」が課題になると杉山さんは言う。
そのとおりだと思うが、これだけでは守りの姿勢。日本がエネルギー大国になるには独自のエネルギー源が必要だ。しばらく前、メタンハイドレート開発の話があったが、今はどうなっているのだろう。
ウィキペディアによると「堆積物に固着して海底に大量に埋蔵されている。メタンは、石油や石炭に比べ燃焼時の二酸化炭素排出量がおよそ半分であるため、地球温暖化対策としても有効な新エネルギー源であるとされるが、メタンハイドレートについては現時点では商業化されていない」とある。

知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~メタンハイドレートとは?|広報特集|資源エネルギー庁
もう少し読み進めると、「日本近海は世界有数のメタンハイドレート埋蔵量を持つとされる。本州、四国、九州といった西日本地方の南側の南海トラフに最大の推定埋蔵域を持ち、北海道周辺と新潟県沖、南西諸島沖にも存在する。また、日本海側には海底表面に純度が高く塊の状態で存在していることが独立総合研究所、石油天然ガス・金属鉱物資源機構、海洋研究開発機構などの調査よりわかっている。…日本のメタンハイドレートの資源量は、1996年の時点でわかっているだけでも、天然ガス換算で7.35兆m3(日本で消費される天然ガスの約96年分)以上と推計されている。


原子力発電は世界では増給中だが、日本では廃絶派の声があり、ほとんど稼働できない状態が続いている。エネルギー安定確保を考えるならば、当座は既存の原子力発電所を再稼働させる。10年、20年先はメタンハイドレートなど国内新エネルギー源の開発実用化によって代替させるというのが、日本でのグリーンエネルギー政策案になるはず。赤字国債でコロナに投じた国費は2020年度冒期の補正予算だけでも57.3兆円(第1次25.5兆円、第二次31.8兆円)。この数分の1を投じれば、世界に先立ってメタンハイドレートの実用化もできたと考える。日本の技術力にそのくらいの信を置いていいのではないか。
コロナとエネルギー。民族存続においてどちらがより重要なのか。そういう議論があってもいいような気がする。
                                      顧問 喜多村悦史

2021年03月15日