怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記228 無策が最良の策ということも

出口が見えないと不安が募る。展望があれば腹が座る。それが人間心理である。

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その一つが福島原発の処理水。構内では基準を超える放射性物質を含む汚染水が発生する。それを浄化したのが処理水。その水を貯め続けている。そのために高価なステンレス製タンクを構内に作り続けている。

これをどうするのかという問題。

A案。海に流す。その際、念には念を入れて十分に希釈する。

B案。永久に貯め続ける。そのためにタンクを増設し続ける。

真面目に考えれば、つまり無責任な先送りをしないのであれば、A案だろう。有害物資を除去済みなのが処理水である。危険性がないものを放出しないことが、かえって危ないという風評を産んでいるのだ。

原爆の広島には70年間生物は住めないと言われていた。当時、政府が広島を封鎖、無人化していたら、今も廃墟のままだろう。政府はそんなことをしなかった。あるいは考えもしなかった。その“無策”が広島の再建を可能にした。

コロナ感染者も同様だ。回復した者の体内にはコロナウイルスは残ってない。にもかかわらず感染者を永久に隔離し続ける医者はいないだろう。処理水を構内の残し続けることの馬鹿さ加減がわかるだろう。

A案に反対するのは福島の水産業界。だが声を聞くと、危ないと言っているのはない。風評被害で海産物がいっそう売れなくなると心配しているのだ。では風評はだれが流しているのか。韓国は、自国の原発で発生したトリチウムを海洋投棄しておきながら、自国が面してもいない太平洋への汚染を言い募る。そのことを日本政府が公開の場で面罵する。それで世間の耳目が集まれば、風評の無内容に世間が気付くことになろう。その間の一過的な販売不振に対する営業補償を考えればよい。政府が買い上げ、希望国民に半値で提供すれば、完売間違いない。

ではなぜB案が採用されているのか。カネ感情が絡むのだろう。タンク増設で潤う業者がいる。老朽化すれば作り変えなければならないから、そこでも新たな事業が発生する。

問題はそれにとどまらない。地震あるいはテロでタンクが破壊されたらどうなるか。漏れだした処理水の量に関わらず、悪質なデマが流されるだろう。その危険を承知で貯め続けることの政策的価値などあるはずがない。また、処理水タンクの存在が、地域一帯の危険性として誤認される原因になっている。

大金を投じ、安全対策を講じるというせっかくの政策だが、混乱期としては正しかった。しかし今はそうではない。

過ちを正すにはばかることなかれ。いっときの大風評を覚悟して、処理水を海洋放出する。それが政治判断。菅総理が好きな言葉、「粛々と進める」の用例としてふさわしい。

顧問 喜多村悦史

2021年03月15日