怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記235 同性と不倫も「不貞行為」

「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」(憲法241項)。

 そんなの当り前ジャン。だれもそう考える。そこから「不貞(ふてい)は許されない」が常識になり、著名人の場合、写真週刊誌等で暴露されても、名誉棄損で訴えようとすると藪蛇で、バッシングがいっそう大きくなる。

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 改めて「不貞行為」とは何か。ウィキペディアでは「配偶者としての貞操義務違反行為(自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと)を意味する、民法第770条に離婚事由として規定されている法律用語である」と解説している。

 ここで「両性」とは、また「性的関係」の定義である。生物学的なオスとメスを両性、性的関係はこのオスとメスとの間では生じる。一昔前ならこれで合格点だったが、近時は落第なのだという。

 2021216日に東京地裁が下した判決が注目される。婚姻関係にある男性と女性の“普通の”夫婦がいた。その妻が他の女性と不倫した。妻の不倫相手が他の男性であれば、夫からその男性に損害賠償請求できることは知られているが、本事件では妻の不倫相手が女性。つまり女性同士で性的関係になっていて、それを知った夫が妻の交際相手の女性に賠償請求をした。そして裁判所がそれを認め、女性に慰謝料支払いを命じた。

 もっとも金額は大きくなかったようで、訴えた夫の弁護士は「同性か異性かではなく、当事者らの関係性を実質的に考慮してくれた」と評価しつつも、賠償額が不十分として控訴。訴えられた女性の弁護士は「賠償額が低かったので(論旨はともかく)実質的には勝訴の同様。控訴審でも粛々と対応する」(以上、加藤園子記者の記事要約、産経新聞2021.3.17)。

 世の中は男性と女性で構成されていると考える者にとっては、ややこしくて混乱する。どうしてこういうことになるのか。渋谷区だったかが、婚姻は男性間、女性間でも成立するといった趣旨の条例を制定し、それが進歩的だと迎合する風潮である。「そんなのおかしいよ、自然の摂理にそぐわない」とでも言いかけたら、たちまち守旧派のレッテルを張られかねない。

そうした同性同士の婚姻が合法化されれば、二人の間で相互に貞操を守る義務が発生する。そこで片方が他人と性的関係を結べば、「不貞行為」を働いたことになる。そして性的関係は、同性間、異性間に関わらず成立するのが近代的解釈であるらしいから、だれであれ婚姻関係にある者と親しくしていると「不貞」を疑われ、探偵(あるいは監視カメラ)につけ回され、賠償請求を受ける可能性が生じるということだ。

そうしたことに巻き込まれない防御方法は、婚姻関係にある者には近づかないこと。逆から見れば、他人から親しく付き合ってほしいという者は、自身を婚姻関係に置かないことが必然事項になる。婚姻を希望しない国民が増えるのも道理である。

高裁が今後どういう判断をするのか。過去の判例では、夫が他の男性と“不倫”したと妻が訴えた事例で、「その他の婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法770条)を根拠に妻の主張(離婚など)を認めている(名古屋地裁昭和47年)事例があるという。同性間での不貞と言わなくても、実質的な解決は可能ということだったのだろう。

 世の中進歩しているのか、単にややこしくなっているだけなのか。

 

2021年03月26日