怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記239 通帳発行費用が必要に

銀行通帳に発行料を求められる時代になった。銀行にも経費面での理由があるのだろうから「反対」と声を挙げても、銀行の窓口を困らせるだけ。ここは気持ちよく、相手の事情を汲んであげようと思う。


 銀行に預金すると利子をもらえる。その“常識”がそもそも通用しなくなっている。普通預金の金利は0.001%。1%の千分の1。昨年コロナ対策で政府が大盤振る舞いした10万円をそっくり銀行に預けたとしよう。1年後に下ろすことになった。利息がいくらついただろうと計算するだろう。10万円の1%は千円。その千分の1ということは、利子の額はちょうど1円。10万円だから1円付いたのであり、1万円の預金だったら0.1円。つまり10銭。ルールを知らないが、最小の通貨単位未満なので、多分切り捨てになるのだろう。

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 他方、使う必要があってコンビニのATMで預金を下ろすとしよう。すると110円の手数料が発生する。1万円ずつ10回に分けて下ろせば、料金総額は1100円。これは10万円に対して1.1%に相当する。預金金利の実に1100倍である。ではあるが、コストとの見合いでは「法外」とまでは言えまい。
ATM料金がもったいないと思う人は銀行の本支店に下ろしに行けば手数料は不要である。しかしながらバスや地下鉄の料金や往復の時間浪費を考えれば、かえって割高であることは自明であろう。


ややこしい話になるのは預金への利息が、超が三つくっつくくらいの低利率になっていることに起因する。この異常値が続く限り、銀行としても企業への貸し付けという本業ではまったく利益を上げることができない。利益が上がらなければ業務の継続はいずれ行き詰まる。ということで経費カットを進めることになる。預金通帳発行の有料化はその一環と考えることができる。
ここで「預金しているのに費用を取るなんておかしい」と考える人がいるだろう。銀行はそうした人向けにインターネット取引を用意している。ところがこれには大きな不安がある。通帳記載では印字という証拠が残るが、インターネット取引では昨年表面化した「ドコモ口座」事件の影がちらつく。知らないうちに第三者に引き出されて残高がなくなったうえに、銀行には信じてもらえないというダブル被害に遭う可能性だ。


パソコンやスマホの扱いすらオッカナビックラなのに、ネットで預金の管理など自在にできるわけがない。昔ながらの通帳による預金管理が安心。そう考えれば預金管理コストを負担するのも仕方がないと認めるしかない。
そこで必要なのは、この手数料を銀行の横暴と思わないよう、自己の認識を改めること。すなわち銀行預金は元本を増やすためではない。強盗や火災などの被害を避けるための保管の委託なのだ。そう考えれば通帳発行管理手数料を支払うことへの心理的抵抗をなくせるであろう。


実はこの手数料のアイデアを10年ほど前、取引銀行の支店長に雑談の中で提案したことがある。そのときは「顧客が納得しませんよ」と相手が消極的だった。でもこれだけ長期間、異常低金利が続けば背に腹は代えられないということか。
これまでは起業への貸し出し金利が銀行の収益源であった。これからは預金者からの手数料が収益源の柱になるとしたら、銀行業の定義が変わることになるのだろうか。

顧問 喜多村悦史

2021年04月01日