怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記240 保険証をマイナンバーで管理

健康保険証保持者の本人確認にマイナンバーを活用することになるらしい。マイナンバーは個人ごとに振り出され、生涯変わらない。

現行制度では、就職、離職のたびに加入先医療保険が変更になり、前の保険証を返して、新しい保険証を発行してもらう。そのための書類仕事でうんざりした経験があるだろう。悪用するのも容易で、資格喪失後の保険証を返さなければ、病院での受療も可能である。本人確認では顔写真が最小限の手段だが、なぜか健康保険証では現在に至るも顔写真がない。だれが反対しているのか不明だが、悪用で損害を被る保険者サイドからも実施の機運がない。不可思議なことだ。

今回マイナンバーの出番ということだが、プロセスを幾段もすっ飛ばしている感を否めない。医療保険の加入資格の出入りの管理がややこしいというのであれば、日本医師会が主張するように、すべての医療保険制度を一元化してしまえば、ただちに解決する。またそれまでの間でも、基礎年金番号を保険証に共通化することができる。年金保険の方は国民年金加入が共通化しているから、一人1番号が実現している。

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 マイナンバーには前史がある。住民票コードというもので平成14年から数千億円を投じて実施されたが、普及せず、無用の長物になった。住民票の請求が容易になる程度の利便しかない割には、プライバシーがダダ洩れになるのではとの懸念が上回ったことによる。今回のマイナンバーでは、社会保障給付や税の納付、災害対策などにも紐づけして、個人情報を他の機関との間で共有化しようとしている。その一環として、健康診断情報、治療手術情報、処方箋情報などをすべて引き出せるようにする。

 レントゲンや血液検査の重複がなくなり、診断結果を共通利用するなど、利便性向上効果には疑問の余地はない。同時に常識的に判断して、医療保険全体での医療費節減効果は巨額になると見込める。ならば保険料が何割下がるのか期待したいところだが、なんと(!)、医療保険へのマイナンバー活用で新たに必要になるシステム運用費用をだれが負担すべきかで押し問答をしているのだという。

 技術進歩は効率向上のためであり、費用節減が成果であるはずなのに、費用増を当然の前提として議論が展開されることの異常性。さらに理解しがたいのが、情報の集中に伴い危惧される個人の健康情報が窃取される懸念への議論がどの程度されているのか聞こえてこないことである。なにを議論し、検討すべきなのか、その基本が闇の中。おかしいぞと思う方が異常なのだろうか。

 

顧問 喜多村悦史

2021年04月01日