怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記242 そうだ、京都行こう

東京オリパラの開閉会式で企画・演出の塔活躍だった佐々木宏さんが辞任した。森喜朗大会組織委員会会長に次いでの重要人物の退場だが、理由は同じく“女性蔑視発言”。報道の表面部分を追っていると「人権感覚に欠けたオヤジどもが支配する暗黒日本社会」のイメージが広がり、オリンピックを開催させてはいけないとのメッセージの基礎が形作られていく。用意周到、組織的に仕掛けられたプロパガンダの匂いを感じる。

 森さんの場合、たしかに発言は軽率だった。だが、あいさつの論旨から脱線した比喩の軽口部分。いわずもがなで、発言要旨では削除される部分だった。

京都の紅葉名所写真特集 - 京都フリー写真素材集:京都の神社・寺院・観光地・世界遺産写真が無料!

 佐々木さんの「東京オリンピッグ」の場合はどうか。増田明美さんの随想「思ふことあり」(産経新聞2020.3.23)を引用すると、「約1年前、演出チーム内でさまざまな企画を出し合う段階で出た一つのアイデア」に過ぎない。アイデアのきっかけは「侮辱された(と第三者が言っている)渡辺直美さんは以前、子供向けのバラエティー番組内で「ピッグ☆レディ」を結成している。骨付き肉を思わせるハンドマイクを持ち、かわいらしい豚の鼻を着けた「ぽっちゃりデュオ」を披露している。佐々木さんの案は検討の「場でメンバーに注意され」、ボツになっており、彼は「指摘されたメンバーにお礼まで述べている」。

 佐々木さんの職業であるクリエイティブディレクター(CD)とは、「コンセプトを開発し、アイデアを具現化するための指針を決定する責務を担い、各分野の専門スタッフを指揮する中心的な立場の人物」という(ウィキペディア)。だとすると、関係者でワイワイ、ガヤガヤと嵐のようにアイデアを出し合い、ぶつけ合うことから始まる。その段階でポリティカルコレクトネス(PC)に縛られたのでは、作業にならない。

 佐々木さんが手がけたテレビコマーシャルには、東海旅客鉄道の「そうだ 京都、行こう。」や樹木希林さんを起用した富士フイルムの“それなりに美しく”などがある。出色だったが、発言統制なしの喧々諤々のブレーンストーミングが基底になければ生まれていなかっただろう。

 この件に関して橋本聖子会長(森喜朗さんの後任)が「私としても責任感じる」と述べている(yahooニュース322日)が、事件のどの部分にどのように責任を感じたのか、マスコミはインタビューで明確化すべきだろう。思想・言論の自由と人権の尊重。このバランスが民主主義社会の基盤なのだ。マスコミは思想警察であってはならないのである。  

顧問 喜多村悦史

2021年04月01日