怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記265 人間貴晩晴

1万円札になることが決定し、国中の人がその業績を勉強し直しているに違いない人物。渋沢栄一翁の生家に寄った。

 立派な家だった。門構えからして圧倒される。表門のほかに、東門があり、屋敷内には蔵がいくつも。総面積は千坪か、2千坪か。そういう計算をして恥じた。

 

 名字帯刀を許された富農だったと伝えられるが、隣近所も築百年以上ありそうな立派で大きな家が並んでいる。この地域全体が豊かだったのだろうか。江戸時代の農民は食うや食わずの飢餓状態であった、などと解説する向きもあるようだが、間違いではないのか。

 カーナビに生家の所在地を入力したが、地籍は「血洗島」。そのまま“チアライシマ”と読むようだ。昔、武将が戦場で片腕を切り落とされる負傷をし、傷口を水で洗って血止めをした場所だとか。

 生家の表座敷に翁が座っていて驚いた。まるで生きているかのよう。説明では人造のアンドロイドとあった。モスクワ、北京、平城の独裁者のように、独裁者の死体の剥製でないことがわかって安心した。

標題の「人間貴晩晴」は栄一翁が書いた書。その前に「天意重夕陽」が来る。読み下すと、「天意夕陽(せきよう)を重んじ、人間晩晴(ばんせい)を貴ぶ」。生家の隣の古い家が「煮ホウトウ」の食堂になっていて、その座敷の掛け軸にあった言葉だ。要するに時間を無為に過ごさず、最後まで努力せよということだろう。その様子をお天道様は見ているぞ。

顧問 喜多村悦史

2021年04月22日