怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記267 折り紙の建物

東陽図書館からの帰り道で通りかかった大きなビル。巨大ゼネコンの一角、竹中工務店の東京本社だ。玄関前には警備員が立っていて、とても「こんにちは」では入れてもらえない雰囲気。ところが一般者入館可能の「折り紙展」をやっていると案内板が出ている。

 珍しもの好きで覗いてみることにした。平日のこともあってか、ぼくたちのほかに入場者はいない。展示は折り紙で再現したさまざまな建築物。

 見て回っていると、よほど暇だったのか、受付の人がやってきて説明を加えてくれる。同社が手掛けた建築物を知る中で、大昔、関係していた「ハウス55プロジェクト」を思い出した。500万円台で100㎡の庶民用住宅を開発しようという通産省と建設省の合同国家事業だった。募集に対して多数の企業が名乗りを上げたが、有力3グループの一つに同社が入っていて、新日本製鐵や松下電工とともに「鉄板ハニカム」構造の家の開発を提案していた。薄い鉄板をハチの巣様に縦に組み立てて耐力壁にすることで、軽くて丈夫な躯体ができるという斬新なものだった。

 

その経緯と折り紙での建物模型は何の関係もないだろうが、親しみを感じることになった。建物の姿だから当然立体であるのだが、元は平面の一枚紙。どこをどう折り曲げれば複雑な立体形になるのか。こういう作品を構想する人は特別な才能を持っているのだろう。

感心していたら「作ってみたらどうですか」と紙片を渡してくれた。よく見ると一枚紙に多数の切れ目が入っている。そばに映像が流れていて、「説明のとおりに曲げていくとできます」。自信がないのでもらって帰り、ネットでの映像説明を見ながら、夫婦で試行錯誤して完成させたのが写真の建物。まあまあの出来でよかった。

組み立てはできたが、この折り紙を考案した人はやはりすごい。折り紙作者の才能を称えよう。

 

顧問 喜多村悦史

2021年04月30日