怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記270 クーデターのメカニズム

ミャンマーで起きたクーデター。わが国は同国の軍部とも縁が深いなどと説明する経済通、外交痛がいるようだが、ならば問いたい。国民を射殺する愚かしい行為をなぜ、あなた方の説得で止めることができないのか。

 クーデターが起きるメカニズムを村井友秀さん(東京国際大学特命教授)が解説している(48日『産経』「正論」)。

 どの国家においても軍は最大最強の組織であり、その動きを実力で阻止できる機関は存在しない。よって軍を文民統制して、クーデターを防止する措置が必要になる。

 その一つは軍を政権と一体化させること。すなわち「主観的文民統治」。これに成功しているのが中国。人民解放軍は共産党の武装部門。親分である党に反旗を翻すことはない。ただし党と運命共同であるから、共産党への国民の信任がなくなっても、忠節を失わず、国民に対して牙をむく。軍が存在する限り、共産党政権は存続する。そして逆も真なりで、共産党政権が倒れれば軍も解体。軍が無力化すれば共産党政権もつぶれる。これは民主主義国では受け入れられない。

 

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 政権交代があり得る民主主義体制において軍によるクーデターを防ぐ方法は、軍幹部が法律に絶対的に従う精神性を確立、継承すること。国法で軍の政治的中立を定め、軍はそれに従う。これを「客観的文民統治」という。アメリカを見ていればわかる。共和党、民主党間で政権が移り、政策が大きく変わっても軍はいっさい干渉せず、国防に専念する。

日本国民が法による統治に自信があれば、自衛隊の戦力がいかに強大化しても、クーデターの心配はない。反対に文民政府が腐敗し、法治に反し、国民と乖離していると、軍は国民を守ると称して政権を倒す口実を得る。

 さてミャンマーの場合。同国の軍は、独立を勝ち取る原動力であり、国内のエリート集団であった。しかし経済発展が進む中で、軍はエリート集団ではなくなり、また軍が営利企業を経営するなど金儲け集団に成り下がっている。よってミャンマーの軍部は国民の信任を失っている。「ミャンマーのクーデターは国民が支持する条件を欠いており正当性はない」というのが、村井先生の判定。明快ですね。

顧問 喜多村悦史

2021年04月26日