怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記278 認知症者の支援対策

高齢になることでの怯えの一つが認知症になること。脳が壊れて自分が自分でなくなる。これは怖いことだ。65歳以上の5人に一人がそうなると報じられれば、わが身はどうなると不安になるのが人情。

 まさに国民的大課題。では対策はどうなっているかと言えば、食事、排せつ、入浴などを自発的にできなくなるからと、介護保険の充実が叫ばれる。だがかつては家族がしていたことを、専門職員を雇用してやらせようというのだから、保険経費の膨張が避けられず、保険料負担は増すばかり。

 そしてより重要なことは、身の回りの世話をしてもらうだけでは該当高齢者の暮らしは大丈夫ではないということだ。

 成人後の子どもとは別居、生計分離が普通になり、高齢者の単身世帯が急激に増えている。夫婦者でも、死ぬ時期は別であり、一方が死亡すれば残った方の単身世帯になる。そしてそれは認知症が多発する年齢層でもある。それでも子どもが遠方であっても健在であればよい。子どもがそもそも生まれなかった夫婦、さらに生涯独身を貫いた者であれば、高齢単身になることがほぼ約束されている。単身高齢者が認知症になれば、住まいに関すること、金融資産の管理に関することを筆頭に、契約の締結、更改ができなくなる。

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 そうした場合のための成年後見制度が用意されているわけだが、その運用実態が満足できる状況でないことは明らかだ。認知症の兆候が出てくれば成年後見の準備を始め、診断確定すれば自動的に成年後見をつける。これを社会制度とする必要があるのではないか。幸い介護保険で「要介護認定」の手続きがある。その理由が認知症である場合に発動することにすればよい。

 ここでさらに考えを進めれば、身体介護は金銭の問題。当の高齢者の年金収入や資産を充当することで、保険からの支出を節減できるはず。介護保険で負担すべきは、それよりも成年後見など法的制度の運営に要する費用ではないのか。介護保険の給付を身体介護サービスから、法的支援に大胆にシフトする。そうすれば介護保険料は軽減され、老後不安は大きく軽減されるはずだ。法務省の人権擁護局を厚労省に移管し、そこに介護保険制度の所管を移すくらいのことを考えてはどうか。

顧問 喜多村悦史

2021年05月03日