怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記286 民主主義の破壊行為

わが国は民主主義体制を取る。憲法にそう書いてある。しかも代表民主制だ。憲法の関連部分を抜き出しておこう。

「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり(以下略)」。

 人類普遍の原理とまで言い切っているのだ。

 そこで河合元法務大臣、河合克行被告(58歳)夫妻が行った大規模選挙買収への論告求刑懲役4年論告求刑(51日東京地裁)の評価である。

「広島県全域で県議ら100人に計約2900万円もの現金を供与しており、現職の国会議員による前代未聞の突出した悪質な犯行だ」と検察は言う。その求刑が懲役4年と追徴金150万円でいいのか。

 民主主義はもろい。一つはテロである。戦前の政党政治に対する度重なるテロはだれもが高校の歴史で習ったはずだ。東京駅頭での原敬総理(1921年)や浜口雄幸総理(1930年)は単独実行犯だったが、5.15事件での犬養毅総理(1932年)では軍人等グループによる官邸襲撃だった。そうしたテロへの断固たる処分を欠いたことが、民主主義者を逼塞させることになった。

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 もう一つは民主主義を内側から融解させる行為である。戦前のソ連によるコミンテルンなどの謀略は明るみに出るようになっているが、現代の中国共産党による民主制の内部切り崩しへの対応策は十分なのか。先の戦時中の共産主義者の浸透小作はわが国ではゾルゲ事件程度だが、アメリカのルーズベルト政権内へのソ連シンパの共産主義者が要職に就いていたことへの証拠は今では隠し切れなくなっている。

 こうした揺さぶりに負けずに民主主義を守るためには、反民主主義者には徹底した対処が必要なのではないか。犯罪のうちでもっとも重いのは殺人というのが通常認識のようだが、平和ボケの日本でも国家の統治機構を壊そうとする犯罪首謀者は「死刑または無期懲役」で刑は重いのだ(刑法77条内乱罪)。

 票をカネで買おうとする選挙買収の罪科は、代表民主制を人類普遍の原理とまで言い切るわが日本国憲法下においては、暴力テロや内乱に匹敵あるいはそれよりもっと重大な犯罪であるように思える。

 現行の法制度での形の重さはバランスが取れていない。選挙買収は代表民主主義を否定する行為として、もっとも罪状が重いはずだ。票を買った側だけでなく、売った側も当然である。自らも選挙で選ばれた県議などが買収に応じたということは、彼ら自身の内面に「票はカネで売買する商品」との意識があると考えられるからだ。

 顧問 喜多村悦史

2021年05月11日