怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記305 カラスに襲われる

木場公園を横切っていたら、地上にカラスがいた。通り過ぎるボクの方を向いてガーとかゲーとか大声を出している。抗議されるようなことはしていないし、そもそもここを通ることは滅多にないから、そのカラスとは知り合いでも何でもないはずだ。

無視するとなおいっそう声を張り上げる。呼びかけているのではなく、「オレの自慢の声を聞け」と言っているようでもある。ひょっとして覚えたての歌を披露しているのかも。立ち止まりかけてはみたものの、お世辞にも美声とは言えない。音程だって、とんだ調子はずれ。

「下手くそ」。ボクはだれも聞きとれない小声でささやき、通り過ぎた。

20歩ほど歩いたところで、後頭部に衝撃を受けた。だれかに素手ではたかれた感触だった。慌てて振り向く。だれもいない。

 頭上で「カー」と声がした。電線に先ほどのカラスが停まっている。こちらを見下ろし「どうだ、思い知ったか」とばかりに声を張りあげている。

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 カラスに頭を蹴られた、あるいは小突かれたのだとわかった。

この野郎! だが相手の位置は高く、手が届かない。こういう場合の対処の仕方はどうだったか。子ども時代、方策は決まっていた。小石を拾い上げて投げつける。それに決まっていた。だが、ここは東京、そして21世紀。ボクは思いとどまった。もし、石を投げてうまく急所に命中し、カラスが落命したらどうなるか。動物愛護法違反か何かで警察沙汰になり、テレビ、新聞にデカデカ書き立てられるかもしれないからだ。カラスは賢いから、それを知っている。

「お前は手を出せない。思い知ったか」とガー、ゲーの追い打ちだ。

人間の後頭部をいきなり蹴とばすのは許されることではない。有害鳥獣ではないか。そう思いつつ、反撃する気を抑え込んでいる自分がいた。野生動物にはなにをされても耐えるのみ。でもねえ。それって正常なのか。

 

顧問 喜多村悦史

2021年05月30日