怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記309 少年卒業時期はいつか

少年法改正案が成立した。子どもは未完成であり、成人と同じ扱いできない。ではいつ、子ども(少年)から大人(成人)になるのか。成長カーブは人ごとに違う。だが個人ごとに判定することにしたのでは、実務に乗らない。そこで年齢で区分となった。

これまでは20歳の誕生日。民法で一人前の権利能力はないものとされ、親などの後見者が就く。その裏腹で犯罪行為をしても、処罰ではなく、保護指導の対象とされている。ところがそれをいいことに凶悪犯罪に走る者がいると、少年法への風当たりはやさしくなくなっている。

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民法が改正され、成人年齢を18歳の誕生日からに引き下げることになっていて、来年4月から施行される。それならば刑事処罰の方でも年齢を合わせなければおかしいだろう。それで少年法の改正がされることになったという次第だ。

ところがその内容がなんとも中途半端。報道によると「改正案は、18、19歳を「特定少年」と位置付け、18歳未満とは区別。起訴され刑事裁判の対象となった段階で、現行法で禁止されている実名報道も可能とした。全ての事件を家庭裁判所に送致し、家裁が犯罪に至る背景などを調査する現行法の枠組みは維持したが、家裁から検察官送致(逆送)する対象犯罪を拡大。法定刑の下限を懲役・禁錮1年以上の罪に広げることで、強盗や強制性交などが新たに加わる。」

どうして単純明快に「今後少年法の対象は18歳未満」と割り切れないのだろう。制度は重箱の隅をつつくような精緻さは不要。だれにでもわかる明瞭さが第一のはずだ。刑法383項では「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない」となっている。理解不能な法律ではまずいのだ。

「少年犯罪被害委当事者の会」代表の武るり子さんは、「民法上では成人として選挙権を行使できるのに、罪を犯したときだけは未熟だからと少年扱い。小学生にどう教えられるのか」と指摘している。これが正常な法制度感覚だろう。

子どもと大人の線引きは統一された簡明なものでなければならない。そこで提案をしたい。18歳の誕生日ではなく、18歳になった以後最初の年度末とする。すなわちほとんどの国民の高校卒業時点をもって成人になる。選挙権も国民年金加入もすべて同じ。同級生がいっせいに成人になり、権利能力の社会人としての責務を負う。これだと「自分が成人になったという自覚がなかった」という言い訳は通用しないはずだ。

 

顧問 喜多村悦史

2021年06月07日