怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記316 五輪に難民選手団

国際オリンピック委員会(IOC)は8日、723日に開幕するオリンピック東京大会に派遣する難民選手団のメンバーを発表した。祖国の戦乱や迫害を逃れた29人が、陸上や柔道、テコンドーなど12種目に出場する。また、国際パラリンピック委員会(IPC)も、824日開幕のパラリンピック東京大会に最大で6人の難民選手団を派遣する方針を発表している。

 嫌なことが多い昨今だが、これは明るいニュースだ。

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国連高等弁務官は、「戦争や迫害で故郷にいられなくなった難民は世界で8千万人に上る。そうした人が希望と夢を描くチャンスになる」と激励のコメントを出している。

難民選手団は、前回2016年のリオデジャネイロ大会で初めて結成され、東京大会が2度目の結成となる。リオ大会の選手団は10人だったが、今回、3倍近くに増えた。メンバーの出身国はシリアやイラン、南スーダンなど11カ国。国連の難民認定を受け、IOCの奨学金を受けながら受け入れ国でトレーニングに励んできたアスリートたちの中から選ばれた。

 世界で政治的迫害を受け、命のリスクにさらされている者は上記の11国に限られない。中国で民族絶滅の試練に直面しているウイグル人やモンゴル人も実質的には難民である。彼ら被迫害者に姿を見せ、世界の人が問題を直視する。そして国際社会が何をすべきかを自問するきっかけにする。それこそ平和の祭典にふさわしい企画である。難民問題の解決は、迫害国に素の行動を改めさせ、難民が故郷に戻って安心して暮らせるように生存の基盤を確立させることがゴールになる。

 その第一歩は現実を紹介し、世界の人々が正しく問題を認識することだ。そのための舞台としてオリンピックの場はふさわしい。であれば、オリンピックの開催はそのための前提になる。

 日本国内には、外国選手団が持ち込むかもしれないコロナウイルスのリスクをことさらに騒ぎ立て、オリンピック返上を言い募る者がいる。難民の窮状への同情心などこれっぽっちも持ち合わせず、わが身のことしか考えないバカ者である。オリンピックは世界の平和や人権に直結する国際行事であることへの思いもないらしい。日本人全体がそうした利己心の塊と思われたら、子々孫々まで恥ずかしい思いをしなければならない。どうしてそのことに頭が回らないのだろう。

 東京大会で難民選手団は、開会式では五輪発祥の地ギリシャに続いて2番目にスタジアムに入場する。入賞すれば、表彰式では出身国の国旗と国歌の代わりに、五輪旗と「オリンピック賛歌」が使われる。日本選手と同じくらいに彼らを応援しよう。それが開催地の国民の態度だろう。

 

顧問 喜多村悦史

2021年06月11日