怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記317 リリー マルレーン

豊住公園に区民有志が育てているらしいバラ園がある。先月は「ヘンリー・フォンダ」という黄色い花の種類を見つけた(第292回)が、今回目にしたのは「リリー マルレーン」という赤いバラ。

 

この名前で思い出した歌がある。昭和50年の紅白歌合戦で梓みちよさんが歌っていたと記憶する。故郷に恋人を残して戦地に出生した若い兵士が彼女を偲んでくちずさむ。そんな情景が目に浮かんでくる歌だった。

そのかなり後、『リリー・マルレーンを聞いたことがありますか』と題する本を書店で見つけ、戦地のラジオ放送でこの歌が流されえると、敵も味方も自然休戦、銃弾、砲弾がピタッとやんだとあった。元はドイツ語でララ・アンデルセンが歌い、連合軍はマレーネ・ディートリッヒを起用して対抗したことなどを知った。

 梓みちよさんの歌詞では2番がよかった。小柄な女性が精いっぱい背伸びして、彼の首筋に腕を回し、「生きて帰ってきて、私いつまでも待っているから」と耳元でささやく。周囲は深い霧。誰かが見ていたってかまうものか。レコードを何度も何度も聞いた。

 一度だけ人前で披露したことがある。ドイツ労働社会省から訪問団が来て接待することになった。屋形船に乗せてレインボーブリッジ方面に連れだしたら、納涼と夜景で大いに喜んでくれた。だがそれだけでは間が持たない。「だれか、かくし芸をやる者はいないか」と上司が言うが、名乗り出る芸達者がいない。

 しかたないので「皆さん、お国で待っている愛しい人に歌をささげましょう」と前置きしてこの歌の一節をアカペラでやってみた。そうしたらドイツ人にはこの歌はポピュラーらしい。全員で歌い始めるではないか。こちらはドイツ語をしゃべれないし、相手も日本語をしらない。歌詞は日本語とドイツ語なのだが、メロディーはそろった。

 

 梓みちよさんバージョンの歌詞は次のとおり。メロディーを知っている人は口ずさんでください。

 

夜霧ふかく たちこめて

あかりともる 街角に

やさしく佇む 恋人の姿

いとしい リリー マルレーン

いとしい リリー マルレーン

 

君は僕に 背伸びして

くりかえした くちづけを

ふたりはひとつの 影にとけてゆく

いとしい リリー マルレーン

いとしい リリー マルレーン

 

雪に埋もれ 地に伏して

いくさの道を 進むとき

こころにひびくは 優しい歌声

いとしい リリー マルレーン

いとしい リリー マルレーン

 

目を閉じれば 見えて来る

街あかりに 君の影

生きて帰れたら 再び遭えるね

いとしい リリー マルレーン

いとしい リリー マルレーン

顧問 喜多村悦史

2021年06月14日