怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記319 幼保一元化10年後に

与党自民党が幼稚園(文科省)、保育所(厚労省)、認定こども園(内閣府)の一元化を10年後に実施する案を検討することになったと報じられている。現行では幼稚園では「教諭」、保育所では「保育士」だが、この統合もすることになる。

 当たり前の要請がようやく検討されることになった。だが問題は時間。なぜ10年後でなければならないのか。制度も行政機構も二重になっている。無駄の典型例。即座の一元化をなぜ決断できないのか。一方は学校法人で、もう一つは社会福祉法人。団体も違うから既得権益の調整に時間がかるというのだろうが、「あなたの利権を少し譲っていただいて」などではまとまるわけがない。団体の人たちは地位と名前とカネが絡んでいる。増やすことなら賛成だが、減るのは1センチでも認めない。

エプロン姿の介護士の女性の写真を無料ダウンロード(フリー素材) - ぱくたそ

 幼稚園も保育所も多額の公金が繰り入れられている。整理が遅くなれば納税者はそれだけ損を蒙ることになる。

 なぜ統合すべきなのか。その原点からの議論を整理しよう。まず3歳以上だが、早期教育は世界の潮流。ならば名称をすべて幼稚園とすればよい。そして教育行政の一環として再整理する。自動的に厚労省の手を離れ、文科省(自治体の教育委員会)に移る。

 3歳未満の保育所であるが、公的支援が必要なのは「保育に欠ける児童」のはずだから、それに限定する。単なる共稼ぎを福祉対象とするから混乱するのだ。共稼ぎ夫婦の子どもを預かる施設に国が関心を持つのはなぜか。主な理由は、①労働者が子どもを産み育てる人権を護ること、②出生率を高めて将来人口を確保することである。そこで弊害になるのが、就業が基本的に雇用形態になる中、夫婦共稼ぎが社会経済的に要請されていることだ。ならば従業員が子どもを預けることにかかる費用を雇用側が負担することにすればよい。人を雇用することに伴う必然費用と位置付けるわけだ。

 そのうえで個別企業の負担とすることで子育て労働者の採用忌避や解雇誘因が生じるという懸念に対しては、全産業界の共同負担とすればよい。先例は障害者雇用のほか、労災保険料や失業保険料負担などいくらでも挙げることができる。ここでの費用には、学童保育費用も含まれる。

そのうえでこの新制度をどこが所管するのか。流れから言えば厚労省の労働政策部局だろうが、重要な産業政策だからと経済産業省が名乗りを上げる可能性もある。あるいは長期的な人口政策に関することであると、厚労省が新部局を設置して担当を主張するかもしれない。参考:厚労省設置法48号に「人口政策に関すること」と明記されている。

いずれにせよ社会的弱者の自立支援を旨とする厚労省の福祉部局でないことは間違いないと思われる。要は制度的一元化を断行し、その最終実施期限を10年後と設定すれば、関係者はタイムリミットに追いかけられて妥協なりをすることになる。万一、期限までに実態面の統合ができない場合は、関係公費支出を問答無用ですべて半減させればよい。予算削減であれば議会与党の権限で実施できるはずだ。

 

顧問 喜多村悦史

2021年06月14日