怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記321 患難見真情

標題の“患難見真情”は台湾語で「まさかの友こそ真の友」という意味だそうだ。

中国共産党の妨害でコロナワクチン購入ができない台湾に、日本政府はワクチン100万回分以上を緊急支援した。今回は小田原評定に陥ることなく機敏に決断し、ただちに空輸した。与党内の議員の主導と聞くが、あっぱれと票を投じた有権者も誇りに思っているのではないか。

これに対し、台湾の主だった企業グループが共同で出稿した新聞全面広告で応じた。そこに記されていたのが表題の文字群。子々孫々に伝えることができる日本国民、民族の宝と言ってよいと思う。

日本からの台湾へのワクチン輸送においては、沖縄駐留のアメリカ軍戦闘機がつかず、離れず護衛飛行をしたと議員の一人がテレビで語っていた。丸腰での旅客機に対空ミサイルを撃ち込むことを平気でするのが専制共産国である。(最近の例ではウクライナでのマレーシア航空撃墜があるということだ※。)

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※ ウクライナ反政府勢力を偽装したロシアによるクリミア等への侵攻作戦中の2014717日、アムステルダムからクアラルンプールへと向かっていたマレーシア航空旅客機がウクライナ-ロシア間の国境から約50km離れたロシア側占領地域で消息を絶ち、残骸が発見された。航空機との通信が途絶えた直後、ロシア傀儡武装勢力は「ウクライナ軍のAn-26輸送機を撃墜した」と戦果を誇示した。しかし残骸が民間旅客機だと明らかになるや、主張を撤回して一切の航空機撃墜を否定し、ロシアも同調している。しかしオランダ主導の事故調査団は、「ロシア支配地域からの対空ミサイルによる撃墜であることは間違いない」との結論を出している。

 

脅しに負けずに台湾に友情を示した政府の英断にエールを送る。ただし注文をつけておきたい。今回の台湾へのワクチンは無償提供。その理由付けとして、①東日本大震災での義援金へのお返し、②人道的配慮などが挙げられている。だがもっと重要な理由があるはずだ。それはわが憲法規定。前文で民主主義、主権在民、人権、他国への圧迫の除去などを「すべての国が負うべき普遍的な政治道徳」と宣言している。

憲法順守義務を負う政府高官や国会議員は、まさにこの憲法規定を順守して、専制中国からの民主主義台湾への圧力を跳ね返したわけだ。したがってワクチン供与の理由として③民主主義を守るためこそを、胸を張って宣言すべきなのだ。

なお台湾住民は2300万人を超える。まだまだ足りない。アメリカもワクチン供与を申し出ているが、迅速性を要する。幸い、日本政府は国民の数を大きく上回るワクチンを確保している。今回は提供するに量は十分だ。そこで必要なのは理念。民主主義を守るための支援なのであるから、無償はおかしい。台湾も経済力はある。有償として長続きする相互支援関係を構築すべきなのだ。

人道主義を強調すると、即座にアフリカなどの最貧国への無償援助を言い出す国内勢力がある。

しかし本質をと別の情景が見えて来る。なぜ最貧国に甘んじているかと言えば、中国の功名な債務の罠にはまっているからで、その結果、西側民主主義国が国連などで「ウイグル人ジェノサイド」などを持ち出せば、多くの最貧国が中国に指示されるままに「そうした事実はない」との中国の主張をオウム返しにする。そうした国々では中国型の専制支配ノウハウを伝授されたリーダー層による専制政治が一般化、高度化しつつある。

人権外交の背景にあるのは、「民主主義と専制主義のいずれが真の人権社会」なのかということなのだ。この本質を踏まえれば、ワクチン外交でも迷うところはなくなるはずだ。

 

顧問 喜多村悦史

2021年06月17日