怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記322 ハンガリー人の民度

 ハンガリーの首都に中国共産党の専制を称賛する大学ができると報じられている。ハンガリー政府が、中国の拠点大学の一つである復(ふく)旦(たん)大学の分校誘致を決めたことに対して、ハンガリーの市民が怒っている。

ハンガリーのフリー素材地図 | 世界地図

首都ブダペストでは、カラーチョニ・ゲルゲイ市長を先頭に大規模デモが発生している。デモのプラカードには、「反逆罪」「復旦大学はいらない」「ハンガリーの大学はハンガリーの資金を使う」などと書かれているとのことで、中央政府のオルバーン首相が中国共産党の機嫌を取るために合意を結んだと非難している。世界中で問題視されている孔子学園同様、中国の教育機関には学問の自由はなく、中国共産党のプロパガンダ装置であることは今や周知になっている。デモに参加したハンガリー国民は、ハンガリー国民の税を使って中国共産党の巨大宣伝機関を作ろうとする意味を問うているのだ。上海の復旦大学には二度ほど行ったことがあるが、構内に巨大な毛沢東像が鎮座しているのに驚愕した記憶がある。

ゲルゲイ市長は、中国の人権抑圧を明らかにするとして、復旦大学建設予定とされる地域の道路名称を、「自由な香港通り」「ウイグル殉教者通り」「ダライ・ラマ通り」などに変更し、抗議の趣旨を明確にしている。

ハンガリーのリベラル系シンクタンク「リパブリック・インスティテュート」によると、世論調査によると、ハンガリー国民の66%が復旦大学のキャンパス設置に反対しており、賛成はわずか27%とのことだ。中央政府のオルバーン首相は、反対国民の声を受け、建設計画を延期し、国民投票に付すことにしたという。

ところでハンガリーという国はわが国ではほとんど知られていないと思う。歴史上有名なところでは、西ローマ帝国を滅ぼす遠因になった民族大移動でのフン族の末裔というのが一点。小学校の先生は、ハンガリー人とフィンランド人は言語面と遺伝面で日本人に近いと言っていたけれど、デモ隊の容姿を見るとそうでもないような。

英雄としてはアッティラ大王。5世紀前半に近隣を切り従えて、「アッティラが来る」の一言で泣く子も黙り込んだという。

近代では第二大戦後ソ連の衛生国に組み込まれたのをよしとせず、ソ連出ていけの抗議デモをしたら、ソ連の戦車に蹂躙されたハンガリー動乱(1956年)が有名。数千人が殺され、25万人が国外亡命した。その腹いせでもあるまいが、1989年ソ連のペレストロイカに乗じて、オーストリアとの国境に設置してあった鉄条網を撤去することで、東独市民の西独への移動を可能にすることで、東ヨーロッパをソ連・ロシアから解放する端緒を作っている。

そのハンガリーの現首相がオルバーン氏。共産党政権打倒で名を馳せたが、民主主義には懐疑的で強権的政治を目指しているとされ、極右主義者とされることが多いが、毛沢東心酔の極左主義者との見方が妥当のようだ。もっとも民主主義にとっては、極右も極左も相入れない敵対者である。オルバーン政権は中国が仕掛ける世界制覇手段である一対一路政策に賛同し、中国製コロナワクチンを導入するなど、EU内の足並みを乱しているが、EUから支援を引き出す陽動なのか、本気で全体主義を信奉しているのか、見方はいろいろのようだ。

オルバーン政権は難民受け入れには反対で、人口対策は自国民の出生増加で対応すべきとの立場で、第三子以降の所得税免除や不妊治療の無償化などの施策を講じている(167回参照)。オルバーン首相自身、5人の子がいるとのことだ。

 

顧問 喜多村悦史

2021年06月17日