怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記324 医療保険のあるべき姿

会期が終了した先の国会で成立した法律に「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」がある。名前は立派だが、内容はといえば、75歳以上の後期高齢者医療の一部負担の原則を1割から2割に引き上げるというもの。これのどこが「全世代対応型」なのか。

読むのに疲れないよう簡潔にまとめる。

全世代の人に公平公正な医療保険を目指すなら、一部負担率を統一すること。その場合、0割(自己負担なし)、1割(現在の後期高齢者)、2割(現行の未就学児童)、3割(現行の一般世代)、5割(かつての国民健康保険や健康保険の家族)が考えられる。

保険財政との兼ね合いで決めることになるが、ボクは5割が妥当と思う。というのはかつてと違って高額療養費制度があるから、医療費で「家計破綻、一家離散」とはならないからだ。さもなければ一律3割だろう。

後期高齢者の一部負担1割から2割への変更に際して、国会で何度も次の質疑があった。問いは「健康保険制度における患者負担増分を居住市町村などが肩代わり負担することは認められるか」。田村憲久厚労大臣の答弁は「地方自治の精神に鑑み可能である。しかし医療保険制度の趣旨に反するからやめてもらいたい」。

 

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この議論のどこがおかしいか。医療保険の何たるかを解していない。高額負担なく医療を受けられるようにする。そのためには医療費を公的に負担することが求められるが、その方法に①社会保険制度と②公費(税金)での負担の二つがあり、いずれを選択するかで諸国は別れる。ドイツやフランスは①で、イギリスやスウェーデンは②だ。

では日本は? なんと両者の混在、よく言えばハイブリッドだが、正しく言えば鵺(ぬえ)的。建前は①なのだが、保険料負担を抑えるためと称して②で補完する。保険料負担しない分、税金を余分に将来世代に課している(赤字国債として)。

医療保障を社会保険方式で行くと決めたならば、それを徹底し、公費(税金)の投入は一切しない。これが論理的帰結である。そうすれば先のような質疑は起きようがないのだ。そして政府財政においても年間10兆円以上の節減になり、多少なりとも国家財政破綻の淵から離れることになる。

それでは患者の自己負担が大きくなるではないか。そういう者がいるだろう。財源がなければ給付はできないのだから、当然のことだ。保険料財源をいかに効率的に給付するか。それが医療保険加入者の選択事項であり、国民皆保険の実質を活かすことなである。

顧問 喜多村悦史

2021年06月19日