怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記327 介護施設への調剤済み薬配達

 薬は患者が持ち帰るものという“常識”が変わろうとしている。

以下は雑誌で読んだ話だ。

熱が出て体がだるい。ふらつく足で診療所まで出かける。途中で倒れてはたいへんだからと介護職員が付き添ってくれたが、それも玄関まで。忙しいからと踵を返す。待合室で待たされること2時間。診察室の順番が回ってくる頃は、空腹が相まって倒れる寸前。先生は「点滴しましょうか」と言ったが、老人が医療費を使い倒してはいけないと気力で断る。

診察が終わり、会計を済ませて(といっても小銭で済む金額だ)、処方箋を受け取る。調剤薬局に向かうが、これは隣なので助かる。同じ建物で玄関が別になっているだけなので、道路をぐるりと一回りする。

診療所とは奥でつながっているそうだから、内玄関を通してくれれば、外に出なくて済むのだが。薬局で待っている間に、ホームに電話する。行きに付き添ってくれた介護士が車で迎えに来てくれた。「デイサービスの送迎車がちょうど帰ってきた。運がよかったね」

 

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まず診療そのものが変わろうとしている。顔なじみ、かかりつけの医師の診察を受けるのにわざわざ出向く必要などないはず。診療所に出向かないのであれば、調剤薬局もオンライン化するのが道理。書類は電子的に交わされる。残るのがお薬の配達。

だれでも思いつくのが宅配業者への委託。発生する宅配料をだれが負担するかの問題が生じる。患者負担が当然だが、経済弱者である施設入所者に負担させてよいのかと福祉関係者が言い出し、ポピュリスト政治家が同調しそうだ。

ならば施設職員が受け取りに行くべきかとなるが、そうでなくても人出不足であり、現実性がない。

そうすると薬局側のサービスになるのが必然か。ただ配達するのでは知恵がない。患者の部屋まで足を運び、服用の仕方や副作用まで丁寧に説明し、体調や服用履歴の確認もする。薬局の業務量増になるが、その経費をどう工面するか。「調剤報酬引き上げはもってのほか」と予防線を張っておこう。服薬指導は薬局の当然の業務上責務。患者宅で行えばさらに効果は上がるはず。往復時間など業務改善で生み出す話だ。

一方の施設側では、薬局職員(基本的に薬剤師)が患者の健康管理をする分、施設の労務が肩代わりされる。労力軽減になり、介護報酬の引き下げが可能になるはずだ。

どういうわけか、日本では、公的財源で支払う報酬では引上げ要素しかカウントされない。これが間違いで、あらゆる要素の方向は「上向き」があれば、「下向」もなければおかしいと思う。

顧問 喜多村悦史

2021年06月22日