怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記333 後妻業の防止策

事実は小説よりも奇なり。言い古された言葉ではあるが、含蓄がある。週刊誌等での報道が過熱している「紀州のドン・ファン殺害疑惑事件」。和歌山県田辺市の大金持ち77歳が急性覚せい剤中毒で死亡した。結婚したばかりの25歳の若妻が怪しいとの情報が多数寄せられ、捜査に至るといろいろな事実が出てきた。それでその妻が逮捕されたという次第。(もう忘れられたかもしれませんね。)

 事実解明はこれからだが、結婚に際して月々100万円が小遣いとして妻に渡されることになっていた。妻が同居をぐずることなどから夫は離婚を求めていた。こうなると状況証拠はほぼ真っ黒。ただし物的証拠が出てこない。

 何年も前にベストセラーになった『後妻業』という小説。むろんそれにはモデルがあったわけだが、一般論として、似たような事件の防止がいかに難しいかがわかったということだろう。

 国民みんなで考えるべきことを挙げよう。

今回の事件は、被害者の資産額が大きく、またその相続に関与する者がいたから、疑惑が表沙汰になった。近縁者がいない、しかも世間が騒ぐほどではない小資産の高齢者が同様の被害(カネとともに命を奪われる)に遭った場合、騒ぎ立てる者がいないで、そのままになってしまう公算が極めて高い。世間の相続争いは資産額1千万円クラスで多発しているとのことだ。そして一人暮らしの高齢者は、通常そのくらいのカネを持っている。つまり振り込め詐欺と同じで、「自分も狙われている」と自覚しなければならない。

そういう事態でありながら、社会的な防御システムができていない。一昔前であれば、高齢者の資産は土地か証券。奪い取っても即座に換金できない。また親類縁者が近隣に多数いたから、ご近所からの「怪しいよ」の声で即座に表沙汰になった。そのシステムが作動しないのが現代。だから後妻ビジネスが成立することになった次第。

遺言について - 【公式】お葬式のひなた

ならば社会的に対策を考えるべきではないか。といってもボクの提案はごく簡単。高齢者(例えば75歳以上の後期高齢者)には遺言作成を厳しく勧奨するのだ。お役所に内容を告げる必要はない。自筆証書として公証人役場に届け出ておくだけでよい。

そして介護保険給付を受ける要介護者・要支援者には、この届け出を義務づける。それだけでよい。振り込め詐欺の心配をする意識があれば、後妻被害の心配をするであろう。前の配偶者と死別した者の場合、資産形成に貢献したのはその配偶者であり、再婚相手ではない。そのことを遺言作成教室でよくよく説明しておけば、今回の紀州のドン・ファンが自発的に遺言を書こうとしたならば、「月々100万円の小遣いを若妻に与えるが、自身の死亡後の資産についは一銭たりとも渡さない」と記したはず。親戚に残すのは嫌だと思えば、「市役所に寄付するので銅像を建ててほしい」とでも書いておけばよい。

遺言の内容は寝物語で若妻に伝わるだろう。遺産を期待しても無駄と分かれば、彼女には覚せい剤で老夫を殺害する益は生じない。長生きしてもらって月々の100万円をもらうのが最良ということになる。離婚されると最悪だから。「同居は嫌」などとのわがままも言わない。八方よしになるではないいか。

顧問 喜多村悦史

2021年06月29日