怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記352   熱海の土石流被害

行政の責任がないがしろにされている。熱海市の土石流事故で判明してきたのは、違法な盛り土工事が行われてきた事実だ。土盛りがまったくの放任事項であれば、盛り土の崩れで生き埋めや家屋流出被害に遭った人が被害者、盛り土の所有者が加害者の関係になる。

しかし熱海市は急傾斜地に多数の家が建つ。そこで同市は森林法をベースに独自の規制条例を策定して、盛り土を許可事項にしていた。許可制とは、市民に対して盛り土をしてはならないと一般禁止にしておき、要件に該当する申請者に対してのみ、禁止の解除をして盛り土を許すことである。

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その際には申請内容が厳しく審査され、不該当事項があれば許可されない。市民は条例の運用費用を市費で賄うことを認め、市税の使用を容認しているのであるから、市の行政官はその負託に応えなくてはならない。当然すぎることだ。

ところで崩れた土地の場合、許可した以上の量の盛り土がなされ、またその後にも無断で追加の盛り土がされたのではないかとの指摘がされている。一見して申請とは異なる外形だったとの指摘もある。そうすると市は何を見ていたのか、監視していたのかということになる。こうした場合に必ず持ち出されるのが「職員が足りないので見回りができなかった」との言い訳だ。

でもこれがまかり通るなら、盛り土を許可制にするべきではなかったということに等しい。行政が許可制でしっかり関しているから、土砂崩れは起きないというのが市民の信頼感。それに対して「市を信用すべきではない」と市役所が答えているようなものだ。「警官が足りないので、本県では犯罪捜査は間引き、抽選で行う」と警察本部長が放言するに等しい。

行政は権限を有する。その費用を市民は負担している。ここには契約が成り立っている。付託された仕事をしない行政は債務不履行だ。

今回の事件の被害者に対しては「行政の賠償」で対応すべきだ。そのうえで個々の行政官の責任追及をとことんすべきだ。そして最終的に市税負担としてあいまいに処理される部分を残してはならない。

実施体制を整えずに、安易に条例制定に関与した企画責任者や実施体制を確認しないで賛成票を投じた議員全員も責任や賠償義務を軽減されてはならない。

だれもがやるべき責務を果たす。それが国民主権社会である。

顧問 喜多村悦史

2021年07月20日