怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記353 エリート官僚が補助金詐欺

経産省の係長二人がコロナ対策の国の給付金をだまし取った容疑で逮捕された。年齢が28歳とあって、ずいぶんと早く出世したものだと思っていたら、キャリア官僚だった。所属したのは省の中核である産業政策局の産業資金課と産業組織課。

この二人は掠め取ったカネで高級ブランド品を買いあさっていたなどと報道されている。エリートのはずがどうして。そんなこんなで思いっきり叩かれている。

違法?合法?]ペーパーカンパニーとは?節税のカラクリを解説 - 起業ログ

「そんなに役所ヒマなのか」「キャリアのレベル下がった影響も」と、元経産官僚で慶応大学教授・岸博幸さん。

「怒りで今もワナワナ震えている」と、これも元経産官僚で経済アナリストの石川和男さん。

「どうしてこんな人が」「情けない」と、元自治官僚で鳥取県知事も務めた片山善博さん。

 加藤勝信官房長官も628日の記者会見で、「政府に対する国民の信頼に関わる問題であり、極めて遺憾と考えている」と述べたとか。肚の中でギロチンにかけてやりたいと思っていたはずだ。

 詐取の舞台になったのは同省が実施している「家賃支援給付金」。コロナによる自粛要請で売上急減の事業者救済が目的で、固定費である家賃に目を付けた補助金だ。仕組みは至って簡単で、「いずれか1か月または連続する3か月の売上高が前年同月比で50%以上減少」すること。すると月家賃の3分の2または3分の1を225万円(個人事業主の場合は112.5万円)上限に6か月分支給してくれる。

 ずいぶんと気前のいい制度と感心するが、二人の場合、そもそも事業などしていない。ペーパーカンパニーを作り、実家など20軒ほどをその営業所に見立てて、給付金を申請したらしい。そうしたら実際に給付金が振り込まれてきた。

 事件の概要を知ると、騒いでいるのが方向違いではないかと思えてくる。給付金の仕組みを知れば、彼らでなくても、詐取の意思があればできそうに思える。コロナなので「性善説で制度設計した」との言い訳が聞こえるが、補助金、給付金では性悪説に基づくのが鉄則のはずだ。詐取した者は彼らのほかにいないのか。その検証こそが重要なはず。「国からカネを引き出すのはたやすいこと」という国民認識ができてしまっては、財政の規律など吹っ飛んでしまう。

常軌を失ったバラマキ政策の行く末がおそろしい。コロナを機に財政面でも国家運営のタガが外れてしまった。

顧問 喜多村悦史

2021年07月20日